源氏物語「賢木・野宮の別れ」定期テスト対策|現代語訳・品詞分解・和歌・敬語

高校古文・定期テスト対策

源氏物語「賢木(野宮の別れ)」
あらすじ・現代語訳・和歌・敬語

六条御息所が伊勢へ下る直前、光源氏が野宮を訪れる場面を中心に、人物の心情、秋の情景、榊の和歌、古語・助動詞・敬語までテストで問われやすい順に確認します。

人物関係場面の流れ重要現代語訳和歌の応酬敬意の方向

最初に人物関係をつかむ

源氏物語「賢木(野宮の別れ)」の人物相関図。光源氏、六条御息所、斎宮、葵の上の関係

中心人物は光源氏と六条御息所。六条御息所の娘・斎宮の伊勢下向が、二人の別れを決定的にします。

最重要

「野宮の別れ」でまず押さえる3点

1

別れの直前の再会

六条御息所は、斎宮となった娘と伊勢へ下る決意をしている。光源氏の訪問は、出発直前の九月七日ごろです。

2

秋の景色=二人の心

衰えた秋草、かれがれの虫の音、冷たい松風が、関係の終わりと別離の悲しさを映します。

3

榊の和歌が題名になる

神域の榊を使い、御息所は源氏の不実を問い、源氏は変わらぬ思いを訴えます。巻名「賢木」の核です。

作品と場面の基本情報

作品
『源氏物語』
作者
紫式部
時代・ジャンル
平安時代中期・物語
位置
第十帖「賢木」

高校教科書では、第十帖全体ではなく、六条御息所と光源氏の「野宮の別れ」「野宮の一夜」と呼ばれる場面が扱われることがあります。光源氏は二十三歳の秋。御息所の伊勢下向を前に、久しぶりに野宮を訪ねます。

野宮の別れまでの流れ

1

六条御息所が深く傷つく

前の「葵」巻で、葵祭の車争いによる屈辱や、本人の意思を離れた生霊が葵の上を苦しめる事件を経験します。光源氏との関係にも距離ができました。

2

娘の斎宮と伊勢へ下ると決める

娘は伊勢神宮に仕える斎宮。御息所は娘に付き添うことを理由に、つらい都と光源氏のもとを離れようとします。

3

光源氏が野宮を訪ねる

伊勢への出発が迫る九月七日ごろ、源氏は人目を避けて嵯峨野の野宮へ向かいます。御息所は迷いながらも、物越しの対面を待ちます。

4

榊の和歌を交わして再会する

源氏は榊を差し入れて変わらぬ心を訴え、御息所はその不実を皮肉に返します。二人の愛情は残っていますが、過去の傷は消えません。

5

暁に別れ、御息所は伊勢へ

再会によって名残惜しさは増します。それでも御息所は決意を変えず、やがて斎宮とともに伊勢へ下ります。

二人の心情を対比する

六条御息所

  • 源氏への愛情は今も残っている。
  • 軽く扱われた屈辱と不信感がある。
  • 会えば決意が揺らぐため、対面をためらう。
  • 高い誇りを保ち、伊勢下向を選ぶ。

光源氏

  • これまで足を運ばなかったことを後悔する。
  • 御息所を遠くへ行かせたくない。
  • 変わらぬ愛情を訴えるが、長い無沙汰がある。
  • 別れが迫って初めて御息所の価値を強く感じる。
記述の軸:「愛情が残っているのに別れる」という単純な悲恋ではありません。御息所の愛情・誇り・源氏への不信、源氏の後悔・執着を対比して書くと得点につながります。

本文理解と現代語訳の重要箇所

1 御息所は迷いながら源氏を待つ

「いでや」とは思しわづらひながら、いとあまり埋れいたきを、物越しばかりの対面はと、人知れず待ちきこえたまひけり。

現代語訳:「さあ、どうしたものか」とお迷いになりながらも、あまりに引っ込み思案でいるのもよくないので、物越しに少し会うだけならと思って、人知れず源氏をお待ち申し上げになった。

主語:六条御息所。対面を拒みたい気持ちと、源氏に会いたい気持ちの間で揺れています。

2 秋の野宮が別離の気分を深める

はるけき野辺を分け入りたまふより、いとものあはれなり。秋の花みなおとろへつつ、浅茅が原もかれがれなる虫の音に、松風すごく吹きあはせて、……いと艶なり。

現代語訳:遠い野辺を分け入っていらっしゃる時から、たいそうしみじみと心を動かされる。秋の花はみな衰え、浅茅の原ではかすれた虫の声に寂しい松風が吹き合わせ、楽器の音が途切れ途切れに聞こえて、たいそう優美である。

衰えた秋の花盛りを過ぎた二人の関係
虫の音・松風別れの寂しさと心細さ
絶え絶えの楽器遠く隔たる二人と余情
表現:「かれがれ」は、草が「枯れ枯れ」であることと、虫の声が「嗄れ嗄れ」であることを重ねて読むのがポイントです。

3 源氏が過去の無沙汰を後悔する

御心にも、などて今まで立ちならさざりつらむと、過ぎぬる方悔しう思さる。

現代語訳:源氏ご自身も、どうして今までたびたび通って来なかったのだろうと、過ぎ去ったことを悔しく、自然とお思いになる。

語句:「立ちならす」は、何度も足を運んでその場所になじむこと。「思さる」の「る」は自発で、後悔が自然に湧くことを表します。

4 榊を差し入れて源氏が訴える

「変らぬ色をしるべにてこそ、斎垣も越えはべりにけれ。さも心憂く」と、聞こえたまへば、

現代語訳:「色の変わらない榊を、変わらぬ私の心の道しるべとして、神聖な垣根までも越えて参ったのです。それなのに、あなたはなんとつれないことでしょう」と申し上げなさると、

二重の意味:榊の常緑の「変らぬ色」に、自分の「変らぬ心」を重ねています。ただし、実際には長く訪ねていないため、御息所には素直に信じられません。
巻名の由来

榊をめぐる和歌の応酬

和歌は一首ずつではなく、御息所の問いかけと源氏の返答をセットで読みます。「神域の語」と「男女の関係」を重ねている点が最重要です。

六条御息所 → 光源氏

神垣は しるしの杉も なきものを
いかにまがへて 折れる榊ぞ

現代語訳:この神垣には、訪ねる目印となる杉もないのに、どう取り違えて榊を折ったのでしょうか。

光源氏 → 六条御息所

少女子が あたりと思へば 榊葉の
香をなつかしみ とめてこそ折れ

現代語訳:神に仕える乙女のいるあたりだと思ったので、榊の葉の香を慕わしく思い、探し求めて折ったのです。

表現表の意味二人の関係での意味
神垣・斎垣神聖な区域を囲う垣根御息所が源氏との間に置く心理的な隔たり
しるしの杉訪ねるための目印となる杉ここを訪ねる確かな理由もないはずだ、という皮肉
神事に用いる常緑樹変わらぬ心、御息所との縁を訴える小道具
少女子神に仕える清らかな乙女神聖な野宮のイメージに寄せながら、御息所への慕情を返す語
香・なつかし榊の香り・心ひかれる御息所を恋しく慕う気持ち
和歌の心情:御息所は「今さら、何を目当てに来たのですか」と源氏の不実を厳しく問います。源氏は「あなたを慕って探し求めて来た」と答えますが、御息所の傷を完全に解く答えにはなっていません。

定期テストに出やすい重要古語

古語この場面での意味訳すときの注意
むげにすぐにも・いよいよ「まったく」だけで固定せず、「今日か明日か」に合わせる。
思しわづらふあれこれ思い悩まれる主語は六条御息所。「思す」は尊敬語。
埋れいたし引っ込み思案だ・無愛想だここでは、まったく会わないのはあまりに情趣を解さないという気持ち。
はるけし遠い嵯峨野の野宮までの距離と、心理的な隔たりを感じさせる。
ものあはれなりしみじみと心を動かされる単なる「悲しい」より、景色と心が響き合う感動。
すごしもの寂しくぞっとする感じだ現代語の「すごい」ではない。
艶なり優美だ・風情がある野宮の寂しさを美として感じる語。
立ちならすたびたび通ってなじむ源氏がこれまで訪れなかったことへの後悔につながる。
わづらはし気づまりだ・はばかられる神聖な野宮で男女が会うことへの遠慮。
まばゆしきまりが悪い・恥ずかしい長い無沙汰をもっともらしく弁解できない気持ち。
しるべ道案内・目印榊の変わらぬ色を、自分の変わらぬ心の証しとする。
心憂しつらい・情けない・つれないここでは、会わせてくれない御息所への恨み言。
なつかし心ひかれる・慕わしい現代語の「昔を懐かしむ」だけではない。
とむ探し求める和歌の「とめて」は「探し求めて」。

助動詞・敬語・主語の要点

『源氏物語』は敬語から主語を判定する問題が頻出です。「誰の動作か」と「誰を高める敬語か」をセットで確認します。

本文文法・敬語主語/敬意の方向
思しわづらひ「思す」=尊敬語語り手 → 六条御息所
待ちきこえたまひけり「聞こゆ」=謙譲語、「給ふ」=尊敬語、「けり」=過去主語は御息所。「聞こゆ」は御息所から源氏へ、「給ふ」は語り手から御息所へ。
分け入りたまふ「給ふ」=尊敬語語り手 → 光源氏
物の音ども絶え絶え聞こえたる「聞こゆ」=自然に耳に入る。「たる」=存続ここは謙譲語ではない。「楽器の音が聞こえている」。
思さる「思す」=尊敬語+「る」=自発主語は源氏。「自然とお思いになる」。
越えはべりにけれ「侍り」=丁寧語、「に」=完了「ぬ」、「けれ」=過去「けり」の已然形「こそ」の係り結びで「けれ」。話し手は源氏。
折れる榊ぞ「る」=完了・存続「り」の連体形「折った榊」。歌の詠み手は六条御息所。
とめてこそ折れ「こそ」=係助詞、「折れ」=「折る」の已然形係り結び。歌の詠み手は光源氏。
聞こゆに注意:「申し上げる」の謙譲語と、「自然に聞こえる」の一般動詞を文脈で区別する。
二方向の敬語:「待ちきこえたまふ」は、謙譲語と尊敬語が同じ箇所に重なっている。
係り結び:「こそ」があれば、結びが已然形になっている箇所を探す。
主語判定:源氏と御息所の両方が高貴なので、敬語だけでなく前後の行動も見る。

情景・場所・小道具の意味

要素本文での役割心情とのつながり
九月七日ごろ伊勢下向の直前、秋が深まる時期別れまで時間がない切迫感
野宮斎宮が伊勢下向前に潔斎する神聖な場所源氏が簡単には踏み込めない距離
小柴垣・黒木の鳥居仮そめながら神々しい野宮の姿御息所の気高さと近寄りがたさ
秋草・虫・松風衰えと寂しさを聴覚・視覚で描く恋の終わりと名残惜しさ
物越し・御簾直接向き合わず、隔てを残して会う愛情と警戒が同時にある
神域にふさわしい常緑樹変わらぬ心の主張と、その主張への疑い
直前確認

テスト前にここだけは言えるようにする

  1. 六条御息所は、娘の斎宮に付き添って伊勢へ下り、都と源氏から離れようとしている。
  2. 源氏は伊勢下向の直前に野宮を訪れ、これまで通わなかったことを後悔する。
  3. 衰えた秋草・虫の声・松風・絶え絶えの楽器の音が、別れの「あはれ」を深める。
  4. 御息所の和歌は、源氏の訪問を「まがへて」と表し、不実さへの皮肉と不信を示す。
  5. 源氏の返歌は「なつかしみ」「とめて」に、御息所を慕って訪ねたという気持ちを込める。
  6. 「こそ―けれ」「こそ―折れ」の係り結びと、「聞こゆ」の二つの用法を説明できるようにする。
  7. 御息所は源氏への愛情が残る一方で、傷ついた誇りを守るために都を去る。

古文の得点をもう一段上げる