下人は最初から悪人ではない
ただし、善を積極的に選んでいたわけでもありません。「盗人になる」ことを肯定できず、飢え死にとの間で決断を止めています。
芥川龍之介『羅生門』のテスト予想問題50問と解答・解説を無料で公開。下人の心理変化、老婆の論理、「ある勇気」、漢字・語句を確認できます。記述問題6問は、解答例と採点の観点まで用意しました。
ただし、善を積極的に選んでいたわけでもありません。「盗人になる」ことを肯定できず、飢え死にとの間で決断を止めています。
盗人になる勇気、老婆を捕らえる勇気、老婆の言い分を聞いて生まれた勇気。それぞれ何へ向かう力なのかを区別します。
老婆の説明が正しいと証明されたわけではありません。下人は「生きるためなら仕方がない」という論理を、自分の引剥ぎへ転用します。
テスト前の使い方:選択問題10問で苦手を確認 → 解説で理由を確認 → 記述6問を自分の言葉で書く。時間がないときは10の論点から復習できます。
50問を10問ずつ解けます。解答記録は保存が許可された同じブラウザに残ります。選択肢の並び順は毎回変わるため、答えの記号ではなく内容を確かめてください。
下の全50問の問題・解答・解説一覧でも学習できます。分野名と「解答・解説を見る」を押して確認してください。
分野名を押すと問題が開きます。まず自分で解き、「解答・解説を見る」で答え合わせをしましょう。LOGIQAオリジナル問題であり、学校の過去問や出題の保証ではありません。
正解:A. 暮方で、雨が降っている
解説:作品は「ある日の暮方」から始まり、下人は羅生門の下で雨やみを待っている。夕暮れ・雨・荒廃した門という設定が、行き場を失った下人の重苦しい状況を支えている。
正解:B. 門が荒れ、死人まで捨てられ、日暮れ後は誰も近づかなくなったから
解説:京都の衰微によって羅生門は修理されず、狐狸や盗人がすみ、引き取り手のない死人まで捨てられる場所になった。そのため日が暮れると、人々は気味悪がって近づかない。
正解:C. 災害が続いて京都が衰微したことの小さな余波を受けたから
解説:地震・辻風・火事・飢饉などによって京都全体が衰えていた。下人の失業も、その大きな社会的衰微が個人の生活へ及ぼした「小さな余波」として説明される。
正解:D. 雨に閉じ込められ、行き所がなく途方に暮れていた
解説:下人には、雨がやんだ後に帰る場所がない。語り手は表面的な行動を訂正し、「行き所がなくて、途方にくれていた」という生活上・心理上の危機を示す。
正解:A. 飢え死にするか、盗人になるか
解説:手段を選んでいれば飢え死にし、選ばないなら盗人になるしかない、と下人は考える。しかし、この時点では盗人になることを積極的に肯定する勇気がない。
正解:B. 雨風と人目を避けて、一晩を明かせる場所を得るため
解説:下人は、雨風の心配がなく、人目にもかからず、一晩眠れそうな場所を探す。楼上には死人しかいないと思っていたため、そこを一時の寝場所にしようとした。
正解:C. 死人だけ
解説:下人は、楼上に人がいたとしても「どうせ死人ばかり」だと考えていた。ところが火が動くのを見て、生きた何者かがいることを知り、警戒しながら上る。
正解:D. 主人から暇を出される→門の下で迷う→老婆を発見する→老婆の着物を奪う
解説:下人は失業して行き場を失い、羅生門の下で生き方を決められずにいる。楼上で老婆を見つけ、説明を聞いた後、その着物を奪って逃げる。
正解:A. 鬘にするため
解説:老婆は、死人の長い髪を抜き、鬘にしようとしていたと答える。下人は、その答えが予想外に平凡だったため失望し、冷やかな侮蔑を抱く。
正解:B. 下人は老婆の着物を奪って闇へ逃げ、その行方は語られない
解説:下人は老婆の着物を剥ぎ取り、急な梯子を駆け下りる。老婆が門の下をのぞいた時、外には暗い夜があるだけで、最後は「下人の行方は、誰も知らない」と閉じられる。
正解:C. 地震・辻風・火事・飢饉
解説:本文では、地震、辻風、火事、飢饉などが続いたと説明される。これらは都の荒廃を具体化し、下人が職を失う社会的背景にもつながっている。
正解:D. 信仰の対象まで生活のために売られるほど、都が衰えていたこと
解説:丹や金銀の箔がついた仏像・仏具の木まで薪として売られる描写は、文化や信仰を守る余裕も失われた都の深刻な衰微を表す。
正解:A. 捨てられた死人の肉をついばむため
解説:烏は楼上に捨てられた死人の肉をついばみに来る。烏が飛び回る姿や石段に残る白い糞は、羅生門が死と荒廃に支配された場所であることを示す。
正解:B. 門の荒廃と死の気配を、色の対照によって鮮明にする
解説:赤い夕焼けを背景にした烏、剥げた丹塗り、石段の白い糞などが視覚的な印象を強める。色だけを暗記せず、修理されない門や、死骸を求めて来る烏という文脈と結びつけて読む。
正解:C. 暗さと重苦しさが迫り、下人を圧迫するような情景を作る
解説:夕闇が空を低くするという擬人的な表現により、暗い雲が下人の上へ重くのしかかる感覚が生まれる。将来を見通せない下人の閉塞感とも響き合う。
正解:D. 語り手の存在を表面化させ、下人の状況をより正確に読み直させる
解説:語り手は「雨やみを待つ」という表面的な説明を自ら言い直す。読者に直接語りかけることで、下人が実際には行き場を失い、途方に暮れていることへ注意を向けさせる。
正解:A. 憂鬱で、とりとめのない思考を続ける気分を強めた
解説:降り続く雨と暗い空は、失業して行き場のない下人の感傷的で沈んだ気分を強める。下人は明日の暮らしをどうにかしようと、同じ考えを繰り返す。
正解:B. 生きなければならないが、正当な手段が見つからず思考が行き詰まっている
解説:下人は明日から生きる必要があるが、職も帰る場所もない。生存の必要と、選べる手段のなさが衝突し、解決できない問題を考え続けている。
正解:C. 手段を選ばないという仮定から、盗人になるという実行の決断へ進めなかった
解説:下人は、手段を選ばないなら盗人になるしかないと論理上は分かっている。しかし、その結論を自分の行動として積極的に肯定する勇気がなく、仮定の段階で止まっている。
正解:D. 生きた何者かの存在と、不穏で異様な空間
解説:死人しかいないと思っていた場所で、濁った黄色い火が動いている。暗い天井や蜘蛛の巣と結びつき、下人が警戒する異様な空間を作る。
正解:A. 未知の相手を恐れ、気づかれないよう慎重に近づく様子
解説:下人は息を殺し、足音を盗み、体を低くして楼上をのぞく。猫や守宮の比喩は、恐怖と警戒の中で静かに接近する身体の動きを具体化する。
正解:B. 恐怖六分・好奇心四分
解説:本文は「六分の恐怖と四分の好奇心」と数値で示す。恐れているだけでなく、何をしているのか確かめたい気持ちもあり、下人はその場から逃げずに観察する。
正解:C. 恐怖が減り、悪への憎悪が強まった
解説:髪が抜けるにつれて、下人の恐怖は少しずつ消え、代わりに激しい憎悪が動き始める。心理変化が老婆の反復動作と並行して描かれている。
正解:D. 老婆個人を越えた、あらゆる悪
解説:語り手は「老婆に対する」と言うのは語弊があると訂正し、下人の反感が「あらゆる悪」へ広がったと説明する。火の比喩は、その急激な高まりを示す。
正解:A. 何の未練もなく飢え死にを選ぶ
解説:この時の下人は、老婆の行為を許せない悪とみなしている。そのため、門の下で盗人を考えていた自分を忘れ、悪を行うより飢え死にを選ぶほどの状態にある。
正解:B. 理由を知らず、合理的に善悪を決められないのに、行為の異様さだけで悪と断定した
解説:下人は、老婆がなぜ髪を抜くのか知らず、合理的には善悪を判断できない。それでも雨の夜に死人の髪を抜く行為そのものを、許せない悪と感じている。
正解:C. 燃え上がった悪への反感に押され、老婆の行為を止めて問いただそうとした
解説:この段階の下人は、盗人になるためではなく、悪への憎悪に動かされて老婆を捕らえる。後に生まれる「ある勇気」とは方向が反対である。
正解:D. 老婆の生死が自分の意志に支配されていると意識したこと
解説:太刀を向けられた老婆が黙り続けるのを見て、下人は相手の生死を支配していると自覚する。その優位の意識が、燃えていた憎悪を冷ます。
正解:A. 仕事を成し遂げた時のような、安らかな得意と満足
解説:下人は老婆を制圧したことを、一つの仕事が円満に成就したように感じる。正義感の高まりが、相手より優位に立った得意と満足へ変化している。
正解:B. 答えが平凡で失望し、憎悪と冷やかな侮蔑が戻った
解説:下人は、老婆の答えが意外に平凡だったため失望する。その失望と同時に、前の憎悪が冷やかな侮蔑とともに心へ戻る。
正解:C. かずら
解説:青空文庫の本文では「鬘」に「かずら」のルビが付く。髪を補うために用いるもの。「かつら」という一般的な読みもあるが、この設問では本文の読みを答える。学校のテストでは使用教科書のルビに従う。
正解:D. 蛇を干魚だと偽って太刀帯の陣へ売っていた
解説:老婆は、女が蛇を四寸ほどに切って干し、それを干魚だと偽って太刀帯の陣へ売っていたと語る。これは老婆が自分の行為を正当化するために出す例である。
正解:A. 飢え死にを避けるため、仕方なくしたと考えるから
解説:老婆は、女も生きるために仕方なく人をだましたのであり、悪とは思わないと述べる。「生存のための行為だから仕方がない」という論理である。
正解:B. 自分も髪を抜かなければ飢え死にするため仕方がなく、同じ事情を知る女なら許すだろう
解説:老婆は、自分も飢え死にを避けるため仕方なく髪を抜いていると説明する。さらに、同じ「仕方がない」事情を知っていた女なら、自分の行為を大目に見るだろうと推測する。
正解:C. 女の過去と生存の必要を利用し、女なら自分も許すはずだと都合よく推測する
解説:女本人はすでに死んでおり、老婆を許したとは確認できない。老婆は女の過去の行為と「仕方がない」という事情を使い、自分の行為も許されるはずだと推測している。
正解:D. 逮捕するつもりはないと示し、何をしていたのか説明させるため
解説:下人は、縄をかけて処罰する役人ではないと伝え、老婆の行為の理由だけを話せばよいと言う。相手の恐怖を和らげ、説明を引き出そうとする場面である。
正解:A. 門の下で欠けていた、盗人になる決断を実行する勇気であり、老婆を捕らえた時とは反対方向の勇気
解説:門の下では、盗人になる結論を積極的に肯定できなかった。老婆の説明を聞いた後、その論理を自分に利用し、老婆から着物を奪う方向へ動く勇気が生まれる。
正解:B. にきびを気にしていた右手が、着物を奪うための動作へ移ったこと
解説:老婆の話を聞く間、右手はにきびを気にしている。決断すると、その手を離して老婆の襟上をつかむ。心理上の迷いが、具体的な犯罪行為へ移る瞬間が動作で示される。
正解:C. 嘲るように老婆の論理を確認し、自分の引剥ぎへ利用する準備をする
解説:本文は「嘲るような声」と明示する。下人は老婆の立場を理解して共感するのではなく、その言い分を確認し、同じ理屈を老婆自身へ突き返そうとしている。
正解:D. 老婆の「生きるためなら仕方がない」という論理を、自分が着物を奪う根拠に転用したこと
解説:下人は老婆の論理を公平な原則として受け入れたのではない。自分も生きるためだとして、老婆から着物を奪うことを正当化するために利用する。
正解:A. 大したことはないと見くびり、そうだと決め込む
解説:下人は、楼上には死人しかいないと「高を括って」いた。実際には火を動かす生きた人物がいたため、その予想は外れる。
正解:B. 同じ考えの周りを行き来し、決断できずにいること
解説:「低徊」は行きつ戻りつすること。ここでは、飢え死にか盗人かという問題を繰り返し考えながら、結論を行動へ移せない状態を表す。
正解:C. ある考え・地点へ行き着く
解説:「逢着」は行き着くこと。下人の思考は、手段を選ばないなら盗人になるしかない、という局面へようやく到達する。
正解:D. その言い方では誤解を招き、正確でないこと
解説:下人の憎悪は老婆個人だけに向いているのではなく、「あらゆる悪」への反感へ広がっている。そのため、老婆への憎悪と言い切るのは正確でない。
正解:A. 冷たく落ち着き、感情を表に出さない態度
解説:「冷然」は冷ややかで落ち着いている様子。下人は太刀を収め、相手より優位な立場から、老婆の自己正当化を冷たく聞いている。
正解:B. 全身の毛が逆立つほど、恐ろしく感じること
解説:旧記の表現を借り、恐怖で全身の毛が逆立つような感覚を示す。六分の恐怖と四分の好奇心に動かされた下人の強い緊張を具体化する。
正解:C. かつて生きていた人間らしさが失われ、物のように転がる不気味さを強める
解説:口を開け、手を伸ばした死骸は、人間だった事実さえ疑われるほど物体化して描かれる。羅生門が生命の尊厳を失った場所であることを印象づける。
正解:D. 暗い空間への下降と、盗人となった下人の不確かな未来を重ねる
解説:「夜の底」は梯子を下りる物理的な動きと、下人が盗人として闇へ進む印象を重ねる。ただし、闇の意味を一つの象徴に固定せず、行方を語らない結末と結びつけて読む。
正解:A. 『今昔物語集』巻二十九「羅城門登上層見死人盗人語」
解説:芥川の『羅生門』は、『今昔物語集』巻二十九の「羅城門登上層見死人盗人語」を主な典拠とする。現行の教科書でも、元になった古典作品との読み比べが学習活動に置かれている。
正解:B. 失業した下人の生存危機、決断の迷い、老婆の自己正当化をめぐる詳細な心理描写
解説:出来事の骨格は原典に由来するが、芥川作品では下人の社会的状況、盗人になることへの迷い、感情の反転、老婆の論理とその転用が詳しく描かれる。説話の出来事が、人間心理を問う近代小説へ作り替えられている。
印刷する場合は、必要な分野と解答を開いてからブラウザの印刷機能を使えます。
京都は災害や飢饉などで荒れ、羅生門も放置されています。主人から暇を出された下人は、飢え死にするか、盗人になるかを考えながらも決断できません。
重要:問題は「雨がやんだ後の行き先」ではなく、明日からどう生きるか。下人は死骸の髪を抜く老婆を見つけ、恐怖・好奇心・憎悪・得意・侮蔑へと揺れます。老婆の説明を聞いた後、「盗人になる」方向へ決断します。
重要:楼上では、下人の感情と立場が一度ではなく段階的に変わる。老婆の着物を奪った下人は、急な梯子を駆け下ります。物語は、その後の行方を説明せず、暗い夜だけを残して終わります。
重要:結末の省略が、下人の未来と悪の広がりを読者に考えさせる。主人から解雇された若い男。生きる手段を決められない状態から、老婆を裁く側に立ち、最後には老婆から着物を奪う側へ移ります。
死骸の髪を抜き、鬘にしようとしていた女性。自分も飢え死にを避けるためだと説明し、その論理を下人に利用されます。
生前、蛇を干魚と偽って売っていたと老婆が語ります。ただし、その人物像は老婆の説明を通してのみ示されます。
「作者はさっき」と、自分の説明を言い直します。読者へ直接語りかけながら、下人の状況や心理を解説する存在です。
京都は荒廃し、羅生門には人が寄りつきません。主人から暇を出された下人には、雨がやんでも帰る場所がありません。
手段を選ばなければ盗人になるしかないと考えますが、それを積極的に肯定する勇気は出ません。
雨風と人目を避けられる場所を探し、死人だけがいると思っていた門の上へ向かいます。
下人は六分の恐怖と四分の好奇心に動かされます。髪が抜かれるにつれて恐怖は消え、悪への憎悪が強まります。
下人は老婆をねじ倒し、太刀を突きつけます。老婆の生死が自分の意志に支配されていると知ると、憎悪は冷め、得意と満足が残ります。
老婆は、髪を抜かれている女も、生きるために人をだましていたと話します。自分の行為も飢え死にを避けるためで、仕方がないと正当化します。
下人は老婆の論理を自分へ適用し、引剥ぎを実行します。着物を抱えて夜の闇へ消え、その行方は語られません。
定期テストでは、気持ちの名前だけでなく、どの表現・出来事を根拠に変化したのかが問われます。
授業前の予習、授業後の課題、読書レポートにも使える作品ですが、一度読んであらすじを追うだけでは記述問題まで届きません。目的を変えて三回読むと効率的です。
下人は頬のにきびを気にしていた右手を、最後に老婆の襟上へ動かします。手の動作を、決断の変化と結びつけます。
楼上の松の火、赤い膿、白い髪、黒い夜。色彩と明暗は、不気味な場面だけでなく心理の緊張を強めます。
死んだ女の行為は、老婆の発言によって示されます。語り手が事実として保証している情報と区別しましょう。
「勇気」「仕方がない」は、場面によって働きが変わります。言葉だけ暗記せず、誰のどの行動を支えるかを確認します。
下人はなぜ老婆の説明を聞いて盗人になる決断ができたのか、老婆の論理はどこまで通用するのか、自分が追い詰められたときにも同じ判断をするのか。本文の一場面と自分の考えを結びつけると、あらすじの写し直しになりません。
| 論点 | 確認する内容 | 答案の中心 |
|---|---|---|
| 荒廃した京都 | 災害・飢饉・町の衰微と羅生門の荒廃 | 下人の失業と、生存の危機を生む社会状況 |
| 語り手の言い直し | 「雨やみを待つ」から「行き所がなく途方に暮れる」へ | 表面的な行動より、下人の置かれた状況を正確に示す |
| 「すれば」の停滞 | 盗人になる結論を積極的に肯定できない | 手段を選ばない理屈と、実行する決断の間で止まる |
| 六分と四分 | 老婆を見た直後の恐怖と好奇心 | 逃げるだけでなく、正体を確かめたい気持ちがある |
| 悪への憎悪 | 老婆個人から「あらゆる悪」への反感へ広がる | 行為の理由を知らないまま、悪と決めて裁こうとする |
| 憎悪が冷める理由 | 老婆の生死を支配できると意識する | 正義感より、優位に立った得意と満足へ変化する |
| 老婆の論理 | 生きるために仕方なくする悪は許される | 死んだ女と自分の行為を同じ論理で正当化する |
| 「ある勇気」 | 門の下で欠けていたものが生まれる | 悪を止める勇気ではなく、盗人になる方向の決断 |
| にきびと右手 | にきびを気にする手が老婆の襟上へ移る | 迷いから実行へ移る動作上の目印として読む |
| 結末 | 下人の行方を説明しない | その後の生き方を限定せず、読者に考えさせる |
「作者はさっき」
語り手が自分の説明を訂正し、読者へ直接話しかけます。語り手の存在を意識させる表現です。
「六分の恐怖と四分の好奇心」
感情を数字で示すことで、恐れながらも老婆を観察し続ける下人の複雑な状態を具体化します。
「松の木片のように」
燃え上がる火と、下人の悪への憎悪を重ねます。ただし、その激しさは老婆を支配した瞬間に冷めます。
「ある勇気」
立派さを保証する言葉ではありません。ここでは、老婆の論理を利用して盗人になる決断を指します。
「夜の底」
梯子を下りる動きを、暗い世界へ落ちていくように描きます。下人の決断と夜の闇が重なります。
「行方は、誰も知らない」
その後を説明しない終わり方です。物語を閉じる一方、下人が向かう先を読者の想像へ開きます。
読み方を隠して答え、次に意味を自分の言葉で説明しましょう。書き取り・抜き出しでは教科書の字体と送り仮名を確認してください。
| 漢字・語句 | 読み方 | 本文での意味・注意点 |
|---|---|---|
| 下人 | げにん | 身分の低い者。作品では主人に仕えていた男。 |
| 検非違使 | けびいし | 都の治安維持や犯罪の取り締まりなどを担った役人。 |
| 衰微 | すいび | 勢いや活力が衰えること。 |
| 饑饉(飢饉) | ききん | 食物が不足し、人々が飢えること。 |
| 逢着 | ほうちゃく | ある事態や問題に出会うこと。 |
| 大儀 | たいぎ | 面倒で、気が進まないこと。本文の「大儀そうに」に対応。 |
| 語弊 | ごへい | 誤解を招くような言い方。 |
| 憎悪 | ぞうお | 強く憎むこと。 |
| 侮蔑 | ぶべつ | 相手を見下し、さげすむこと。 |
| 存外 | ぞんがい | 思っていたのと違って。予想に反して。 |
| 鬘 | かずら | 髪を補うためのもの。本文のルビに注意。 |
| 未練 | みれん | 思いを残して、あきらめきれないこと。 |
| 引剥 | ひはぎ | 人の着物などをはぎ取って奪うこと。 |
| 行方 | ゆくえ | 行った先。所在。 |
下人の気持ちだけでなく、「何がきっかけで、どう変わったか」まで説明します。字数・採点の観点はLOGIQAの練習用です。学校の問題では、設問条件と授業で扱った読み方を優先してください。
解答例を見る前に、本文の根拠を確認して書いてみましょう。
解答例:下人は、手段を選ばなければ盗人になるしかないと分かりながら、その悪を自分で選んで実行する勇気を持てなかったから。 (56字)
採点の観点:
誤答との違い:「どうすればよいか分からなかったから」だけでは、結論は分かっているのに実行できない葛藤を説明できません。
解答例を見る前に、本文の根拠を確認して書いてみましょう。
解答例:老婆を制圧し、その生死を自分の意志で左右できると知って、悪を憎む気持ちが得意と満足に変わったから。 (49字)
採点の観点:
誤答との違い:「老婆がかわいそうになったから」は不適切です。本文の根拠は同情ではなく、相手の生死を支配する自覚です。
解答例を見る前に、本文の根拠を確認して書いてみましょう。
解答例:死んだ女も生きるために人をだましていたのだから、飢え死にを避けるために髪を抜く自分の行為も許すはずだと考えた。 (55字)
採点の観点:
誤答との違い:「悪いことをした女だから、罰を与えてよい」では、生活のための悪は仕方がないという老婆の論理とずれます。
解答例を見る前に、本文の根拠を確認して書いてみましょう。
解答例:飢え死にを避けるためなら悪も仕方がないという老婆の理屈を利用し、着物を奪って盗人になることを決断する勇気。 (53字)
採点の観点:
誤答との違い:「老婆の悪を止める勇気」では反対です。老婆を捕らえた時と、その説明を聞いた後を分けて考えます。
解答例を見る前に、本文の根拠を確認して書いてみましょう。
解答例:生きるための悪は仕方がないという老婆の論理を自分にも当てはめ、飢え死にを避けるために着物を奪う行為を正当化した。 (56字)
採点の観点:
誤答との違い:「老婆の考えに納得した」だけでは不足です。納得した内容と、それを自分の引剥ぎに利用したことまで書きます。
解答例を見る前に、本文の根拠を確認して書いてみましょう。
解答例:下人が闇へ消えた印象を強めるとともに、盗人になった後の生き方を限定せず、その行く末を読者に想像させる。 (51字)
採点の観点:
誤答との違い:「その後も悪事を続けたと分かる」は断定しすぎです。本文は行方を明らかにしていません。
冒頭の下人は善を選んでいるのではなく、盗人になる決断を実行できずに止まっています。
老婆の説明は自己正当化です。下人が利用したからといって、語り手が倫理的に承認したわけではありません。
若さ・未熟さ・自意識などの読みはあり得ますが、まず本文での右手の動作と心理変化を根拠に説明します。
教科書では、芥川作品と元になった古典作品を読み比べる活動が設定されることがあります。題材が同じというだけでなく、芥川が何を加えて近代小説へ作り替えたかを確認します。
羅城門の上、死人の髪を抜く老婆、着物を奪って逃げる男など、物語の骨格となる要素。
失業した下人の生存危機、決断できない心理、老婆の自己正当化、論理を利用して悪へ進む過程、語り手の働き。
老婆と下人は、どちらも生きるためだと説明します。二人の行為に違いがあるか、本文を使って考えます。
下人は老婆の説明を聞いて行動しますが、そこには感情、力関係、侮蔑も関わっています。
悪への憎悪は、老婆を制圧した瞬間に冷めます。下人が本当に守ろうとしたものは何かを考えます。
本文を根拠に説明する力や、異なる立場の論理を比べる力は、大学の課題文読解や記述の基礎になります。文学への関心が深まったら、大学別の対策もご覧ください。『羅生門』が各大学で出題されるという意味ではありません。
現代文の定期テストで、本文の根拠を使って説明する練習は、小論文・志望理由書・面接でも役立ちます。総合型選抜・学校推薦型選抜に向けて、今から何を優先するか相談できます。