李徴はもともと優秀だった
若くして難関試験に合格した秀才です。しかし、自分の才能への自信と、才能の限界を知られる恐怖を同時に抱えていました。
あらすじ、李徴と袁傪の人物像、虎になった理由、「臆病な自尊心」「尊大な羞恥心」、第3段落、漢字・語句、李徴の漢詩、最後の咆哮まで、定期テストに出る形で確認します。
WEB TEST|Webでできるテスト予想問題50問このページ上で10問ずつ解答できます。解答記録は同じブラウザに保存され、未回答の続きやまちがい直しにも進めます。 問題を解く →
若くして難関試験に合格した秀才です。しかし、自分の才能への自信と、才能の限界を知られる恐怖を同時に抱えていました。
怪奇現象だけを描いた話ではありません。李徴自身が、育て続けた尊大な羞恥心こそ「猛獣」「虎」だったと分析します。
第3段落は人間の心が失われる恐怖、第5段落は虎になった心理的原因を語る場面。心情・比喩・記述問題が集中します。
低い役職で俗悪な上司に仕えることを嫌い、故郷に戻って詩人として名を残そうとします。
名声は上がらず生活も苦しくなり、妻子を養うため再就職します。かつて見下した同輩の命令を受け、自尊心を傷つけます。
旅先の汝水のほとりで、李徴は夜中に叫びながら走り去り、二度と戻りません。
人食い虎が袁傪に襲いかかろうとして思いとどまり、人間の声を発します。声の主は李徴でした。
人間の心が戻る時間は次第に短くなっています。やがて友さえ認識できず、食い殺す虎になることを恐れます。
李徴は詩を記録させ、「臆病な自尊心」と「尊大な羞恥心」が才能を空費させ、自分を虎にしたと語ります。
袁傪に妻子の世話を頼み、最後に虎の姿を見せます。月を仰いで二声三声ほえると、叢へ消えます。
出版社や版によって改行、表記、ページ番号が異なる場合があります。ここでは高校の授業・テスト対策で広く使われる七つのまとまりで整理します。
官吏を辞めて詩人へ。失敗して復職し、発狂するまで。
人食い虎との遭遇、声による李徴の確認、叢越しの会話。
虎になった経緯、人間性が消える恐怖。
詳しく確認
詩人として生きた証しを後世に残したいという願い。
臆病な自尊心、尊大な羞恥心、才能の空費。
詳しく確認
妻子への願い、自己批判、虎の姿、月への咆哮。
下吏となって長く膝を俗悪な大官の前に屈するよりは、詩家としての名を死後百年に遺そうとした。
言い換え:低い役職で気に入らない上司に頭を下げ続けるより、詩人として後世に名を残したいと考えました。
貧窮に堪えず、妻子の衣食のために遂に節を屈して、再び東へ赴き、一地方官吏の職を奉ずることになった。
言い換え:詩では生活できず、妻子を養うため、誇りを曲げて再び役人になりました。詩業への半ばの絶望もあります。
第3段落は、単なる変身シーンではありません。李徴の中で人間の理性・記憶と虎の本能が入れ替わっていく恐怖を追います。
知らぬ間に自分は左右の手で地を攫んで走っていた。……谷川に臨んで姿を映して見ると、既に虎となっていた。
流れ:名を呼ぶ声を追う → 山林へ入る → 四つ足で走る → 毛が生える → 水面で虎の姿を確認する。
眼の前を一匹の兎が駈け過ぎるのを見た途端に、自分の中の人間は忽ち姿を消した。
言い換え:死のうと考えていた人間の理性が、獲物を見た瞬間に消え、虎の本能が李徴を支配しました。理性が戻った時、口は兎の血で汚れています。
人間にかえる数時間も、日を経るに従って次第に短くなって行く。
恐怖:やがて人間だった過去を忘れ、袁傪を友と認めず食い殺しても後悔しない虎になることを予感しています。
己の中の人間の心がすっかり消えて了えば、恐らく、その方が、己はしあわせになれるだろう。だのに、己の中の人間は、その事を、この上なく恐しく感じているのだ。
答案:人間の心が完全に消えれば、虎としての行為を振り返って苦しむこともなくなる。しかし、まだ残っている人間の心は、自分の記憶・理性・人格が失われることを恐れている。
この気持は誰にも分らない。誰にも分らない。
効果:同じ言葉を繰り返し、理解者のいない孤独と、言葉で伝え切れない切迫感を強めています。
己の珠に非ざることを惧れるが故に、敢て刻苦して磨こうともせず、又、己の珠なるべきを半ば信ずるが故に、碌々として瓦に伍することも出来なかった。
意味:自分が宝石ではないと判明するのが怖くて磨かなかった。一方で、自分は宝石かもしれないと思うため、平凡な人々と同じ場所で地道に努力することもできませんでした。
人間は誰でも猛獣使であり、その猛獣に当るのが、各人の性情だという。己の場合、この尊大な羞恥心が猛獣だった。虎だったのだ。
意味:人は自分の性格を制御しながら生きる存在です。李徴は羞恥心と自尊心を制御せず、逆に育てたため、その性情が自分や周囲を傷つける虎になりました。
才能の不足を暴露するかも知れないとの卑怯な危惧と、刻苦を厭う怠惰とが己の凡てだったのだ。
答案:才能が全くなかったのではなく、才能の限界を知られる恐怖と努力を避ける怠惰によって、持っていた才能を十分に磨かなかったためです。
己の毛皮の濡れたのは、夜露のためばかりではない。
意味:毛皮は夜露だけでなく、理解者のいない孤独、空費した人生への後悔、人間性を失う恐怖による涙で濡れています。
偶因狂疾成殊類 災患相仍不可逃 今日爪牙誰敢敵 当時声跡共相高 我為異物蓬茅下 君已乗軺気勢豪 此夕渓山対明月 不成長嘯但成嗥
大意:狂気によって異類となり、重なる災いから逃れられない。今は爪と牙に敵う者はいないが、昔は君と名声を競った。私は草むらの下の獣、君は車に乗る高官。今宵、明月に向かって詩人らしく長く吟じることもできず、ただ獣のほえ声となる。
| 部分 | 押さえる対比 | テストポイント |
|---|---|---|
| 偶因狂疾成殊類 | 人間だった過去/異類となった現在 | 狂疾によって虎になった不運を述べる |
| 今日爪牙誰敢敵 | 虎としての強さ/人間としての無力 | 肉体は強くても、詩人として表現できない |
| 我為異物/君已乗軺 | 草むらの李徴/高官となった袁傪 | 同年合格の二人の現在の境遇を対照させる |
| 不成長嘯但成嗥 | 人間の詩的表現/虎の咆哮 | 伝えたい心はあるのに、他者には獣の声としてしか届かない |
本当は、先ず、この事の方を先にお願いすべきだったのだ、己が人間だったなら。
意味:妻子の生活より自分の詩業を先に頼んだことを、李徴自身が「人間らしさを欠く自己中心性」の表れとして批判しています。
勇猛さを誇るためではありません。自分の醜悪な姿を見せ、袁傪が再びこの道を通って会おうとしないようにするためです。友を襲う危険から遠ざける、最後の配慮です。
虎は、既に白く光を失った月を仰いで、二声三声咆哮したかと思うと、又、元の叢に躍り入って、再びその姿を見なかった。
効果:夜明けとともに月の光が失われる様子が、人間としての李徴が消え、虎へ戻っていく時間と重なります。咆哮は、言葉にできない別れ・悲しみ・自己表現です。
| 語句 | 読み | 本文での意味 |
|---|---|---|
| 博学才穎 | はくがくさいえい | 広く学問に通じ、才能が非常に優れていること |
| 狷介 | けんかい | 自分の考えを固く守り、他人と協調しにくいこと |
| 自ら恃む | みずからたのむ | 自分の才能・力を頼みにする |
| 賤吏 | せんり | 身分の低い役人 |
| 歯牙にもかけない | しがにもかけない | 問題にせず、相手として扱わない |
| 怏々 | おうおう | 不満で心が晴れない様子 |
| 畏怖嫌厭 | いふけんえん | 恐れ、嫌う気持ち |
| 久闊を叙する | きゅうかつをじょする | 久しく会わなかった間のことを語り合う |
| 伝録 | でんろく | 言葉を伝えて書き記すこと |
| 記誦 | きしょう | 記憶して、そらで唱えること |
| 倨傲 | きょごう | おごり高ぶること |
| 切磋琢磨 | せっさたくま | 互いに励まし合って学問・技術を磨くこと |
| 憤悶 | ふんもん | 腹を立て、悩み苦しむこと |
| 慟哭 | どうこく | 声を上げて激しく泣くこと |
| 咆哮 | ほうこう | 獣が大声でほえること |
| よく出る問い | 答案に入れる要素 |
|---|---|
| 李徴が虎になった理由を説明せよ | 超自然的には原因不明だが、李徴自身は、臆病な自尊心と尊大な羞恥心を育て、努力や他者との交流を避けた性情が虎になったと考える |
| 「臆病な自尊心」とは何か | 自分に才能があると思いたい一方、本気で努力して才能不足が明らかになることを恐れ、挑戦や研鑽を避ける心 |
| 「尊大な羞恥心」とは何か | 未熟な自分を人に見せる羞恥心を、他人を見下す尊大な態度で隠す心 |
| 人間の心が消えれば「しあわせ」なのに恐ろしいのはなぜか | 消えれば虎としての行為を悔やまずに済むが、現在残る人間の心は、記憶・理性・人格が失われることを恐れるため |
| 袁傪は作品でどのような役割を持つか | 李徴の告白を引き出して記録し、李徴と対照的な人生を示し、理解者・証人として人間の李徴を最後につなぎ止める |
| 最後の咆哮にはどのような意味があるか | 袁傪との別れ、理解されない悲しみ、人間として残る思いを、言葉ではなく虎の声で表したもの |
『山月記』は、ざっくり言えば、元エリート官僚、詩人を目指して退職 → 売れない → 復職 → 発狂 → 虎化の話です。「ラノベみたいでしょ?」と生徒に言ったら、「超ウケるんだけど。朝起きたら虎になっていた件、みたいな?」と言われました。
今読んでも入口は強烈ですから、発表当時の読者にもかなりインパクトのある設定だったでしょう。でも、虎にはならないまでも、プライドが高すぎて人に教わるのを避けたり、失敗して実力が分かるのが怖くて本気を出さなかったりすることは、今の世の中にもあります。李徴の話が長く読まれるのは、笑える設定の奥に、ちょっと笑えない自意識があるからかもしれません。
あらすじ・人物、第3段落、第5段落、漢字・語句、李徴の詩・総合問題を各10問。上のWebテストでは10問ずつ解答でき、下の一覧では全50問の選択肢・正解・解説を確認できます。
正解:A.博学才穎で、若くして進士に合格した。
李徴は広く学問に通じ、才能に優れ、若くして進士に合格した人物です。最初から落ちこぼれていたのではなく、能力と自負があったからこそ、その後の挫折と自尊心の傷が深く描かれます。
戻るポイント:冒頭の「博学才穎」「若くして名を虎榜に連ね」を確認。
正解:B.低い役職で俗悪な上司に仕えるより、詩人として名を残したいと考えたから。
李徴は賤吏として大官に膝を屈することを潔しとせず、詩家として死後に名を残そうとしました。向上心だけでなく、低い地位を受け入れられない自尊心も読み取れます。
戻るポイント:第1段落の「下吏」「俗悪な大官」「詩家としての名」を結び付ける。
正解:C.貧窮に耐えられず妻子を養う必要があり、詩業にも半ば絶望したから。
生活が苦しくなり、妻子の衣食のために誇りを曲げて復職しました。本文は同時に、詩業への半ばの絶望も理由として示しています。
戻るポイント:「貧窮」「妻子の衣食」「詩業に半ば絶望」の三点。
正解:D.温和な袁傪の性格が、峻峭な李徴の性情と衝突しなかったから。
二人は同年に進士に合格した旧友です。袁傪の温和さが、鋭く人と衝突しやすい李徴の性格を受け止めたため、友人の少ない李徴にとって最も親しい存在になりました。
戻るポイント:李徴=峻峭、袁傪=温和という対照を押さえる。
正解:A.醜い姿を友にさらす羞恥と、袁傪に恐怖・嫌悪を抱かせる不安があるから。
李徴は自分を「異類の身」と呼び、醜悪な外形を旧友に見せることを恥じます。また、姿を見せれば袁傪に畏怖嫌厭の情を起こさせると考えています。
戻るポイント:第2段落の「愧赧」と「畏怖嫌厭」の二方向。
正解:B.兎を見た瞬間に人間の心が消え、理性が戻った時には兎を食べた後だったこと。
死を考えていた李徴ですが、兎を見た瞬間に虎の本能が人間の心を押しのけます。人間の心が戻った時、口は血にまみれ、兎の毛が散っていました。
戻るポイント:第3段落の「兎」「人間は忽ち姿を消した」を確認。
正解:C.記憶している自作の詩を、後代に残るよう書き取ってほしいということ。
李徴は生涯執着した詩を一部でも後世に伝えたいと願い、袁傪の部下に伝録させます。妻子の依頼より詩を先にした点は、後で本人が厳しく自己批判します。
戻るポイント:第4段落の「詩数百篇」「伝録」と、第6段落の自己批判をつなぐ。
正解:D.自分が虎になった経緯を詳しく妻子に伝えてほしい。
李徴は虎になった事実を妻子には伏せ、自分は死んだと伝えるよう頼みます。さらに、残された妻子が生活に困らないよう袁傪に世話を願います。
戻るポイント:「決して今日のことだけは明かさないで欲しい」が鍵。
正解:A.その時には人間の心を失い、友と認めず襲うかもしれないから。
李徴は人間に戻れる時間が短くなっており、次に会った時には袁傪を友と認識できない可能性を恐れています。友を危険から遠ざけようとする最後の配慮です。
戻るポイント:第3段落の「人間の心が消える恐怖」と第6段落の依頼をつなぐ。
正解:B.月を仰いで二声三声咆哮し、叢へ戻って姿を消した。
本文上確実なのは、李徴が白く光を失った月を仰いで二声三声咆哮し、元の叢へ戻ったことです。咆哮の意味は、別れ、悲しみ、人間の言葉を失いつつある状態などと関連づけて問われますが、まず行動と情景を正確に押さえましょう。
戻るポイント:最終文の「月」「二声三声」「叢」の三語。
正解:C.名を呼ぶ声を追う→山林へ入る→四つ足で走る→谷川で虎の姿を知る。
変身は李徴の意志的な選択として描かれません。正体不明の声を追ううち、身体が徐々に虎へ変わり、水面で初めて外形を確認します。
戻るポイント:第3段落前半の動作を時系列で追う。
正解:D.声の正体は本文中で明かされていない。
本文は「誰かが我が名を呼んでいる」とだけ記し、声の主を明かしていません。したがって、袁傪・妻・虎など特定の存在を正解として補うことはできません。
戻るポイント:根拠のない人物名を補わず、本文で明示された範囲を答える。
正解:A.現実には起こり得ない変身をすぐ受け入れられず、以前に夢だと自覚する夢を見た経験があったから。
李徴は目を疑い、次に夢だと考えます。しかし夢ではないと悟ると、どんなことでも起こり得ることを深く恐れます。
戻るポイント:「眼を信じなかった→夢と思った→夢でないと悟った」の三段階。
正解:B.生き物は自分の境遇の理由を理解できないまま、それを受け入れて生きるほかないという認識。
李徴は変身の直接原因を理解できず、存在そのものが理由の分からない運命を押し付けられて生きるものだと一般化します。後の第5段落では、心理的には思い当たる原因を語ります。
戻るポイント:第3段落の「原因不明」と第5段落の「自己分析」を区別する。
正解:C.死を考えていた人間の理性が消え、虎の捕食本能が李徴を支配した。
「自分の中の人間は忽ち姿を消した」という表現で、人間の意志が虎の本能に取って代わられます。理性が戻った後に残る血と毛が、行為の残酷さを示します。
戻るポイント:人間の心と虎の本能が交代する構造。
正解:D.人間の心が戻り、虎として行った残虐な行為と自分の運命を振り返る時。
虎の本能に支配されている間ではなく、人間の理性が戻った時に苦しみます。自分の行為を認識し、後悔できる人間性が残るからこそ苦痛が生じます。
戻るポイント:「人間の心で、虎としての己の残虐な行のあとを見る」。
正解:A.人間性の土台が残っていても、獣の習慣に徐々に覆われ、見えなくなる様子を具体化する。
本文では、人間だった記憶や理性が残る状態を古い宮殿の礎に、日ごとに重なる虎の習慣を土砂にたとえています。一度に消えるのではなく、土台が徐々に覆われて見えなくなる過程を具体化した比喩です。
戻るポイント:比喩では「何が何に対応するか」をセットで答える。
正解:B.虎の残虐な行為を人間の心で振り返り、悔やみ苦しむことがなくなるから。
ここでの「しあわせ」は積極的な幸福ではなく、苦痛を感じる主体そのものが消える状態です。しかし残る人間の心は、自分の消滅をこの上なく恐れています。
戻るポイント:「苦しまなくなる」と「人間性を失う恐怖」の逆説。
正解:C.理解者のいない孤独と、感情の切迫を強調する。
同じ文を重ねることで、同じ境遇でなければ理解されないという孤独と、感情の切迫を強めています。後の「誰かにこの苦しみが分って貰えないか」という訴えにもつながります。
戻るポイント:反復法は内容の強調と感情の高まりを見る。
正解:D.人間だった記憶を失い、袁傪を友と認めず食い殺しても悔やまない虎になること。
恐怖の中心は外形が虎であることだけではありません。記憶・理性・友情・後悔する心を失い、自分が自分でなくなることです。
戻るポイント:「どうして以前、人間だったのか」と考え始めた変化に注目。
正解:A.臆病な自尊心と尊大な羞恥心。
変身の直接原因は第3段落で「分からぬ」とされています。ここで答えるのは、後に李徴自身が行う心理的な自己分析です。李徴は臆病な自尊心と尊大な羞恥心を育てたことを、自分が虎になった運命と結び付けています。
戻るポイント:第3段落=直接原因不明、第5段落=心理的自己分析。
正解:B.自分の才能を信じたいが、努力して才能不足が明らかになることを恐れる心。
李徴は自分を「珠」かもしれないと思う一方、「珠ではない」と判明することを恐れ、師に就くことや詩友との研鑽を避けました。自尊心を傷つけられる恐怖が、努力から逃げる臆病さと結び付いています。
戻るポイント:自信と恐怖が同時にある矛盾した心。
正解:C.未熟さを人に見られる恥を、他者を見下す尊大な態度で隠す心。
李徴は未熟な自分を人に見せることを恥じ、人との交わりを避け、外からは倨傲・尊大に見える態度を取りました。羞恥心を尊大さで覆うという、本文の行動に即した整理です。
戻るポイント:外から見える尊大さ/内側の羞恥心を分ける。
正解:D.批評や比較によって自分の才能不足が明らかになることを恐れたから。
本気で学ぶことは、自分の作品を他者の評価にさらすことでもあります。李徴は自尊心を守るため、その成長に必要な過程を避けました。
戻るポイント:「珠に非ざることを惧れる」が理由。
正解:A.自分は平凡な人々とは違う、珠であるはずだと半ば信じていたから。
自分が宝石ではないと知るのは怖い一方、自分は宝石かもしれないという意識もあります。そのため、瓦にたとえられる平凡な人々と同じ場所で努力できませんでした。
戻るポイント:珠=特別な才能、瓦=平凡な人々。
正解:B.各人が内側に持つ性情。
李徴が用いる比喩では、猛獣使いが人間、猛獣が各人の性情に当たります。李徴は、自分の場合は尊大な羞恥心を飼い太らせ、それに支配されたと自己分析します。
戻るポイント:猛獣使=人間、猛獣=性情の対応。
正解:C.尊大な羞恥心という性情を飼い太らせた結果、内心にふさわしい猛獣の外形になった。
これは語り手が変身の客観的原因を確定した箇所ではなく、李徴自身が自分の運命を受け止めるために示した答えです。「なぜ虎になったか」の唯一の答えを決めるより、李徴が虎化をどう解釈したかを読むことが大切です。
戻るポイント:「外形を内心にふさわしいものに変えた」という自己分析。
正解:D.才能不足が露呈する恐れと、苦しい努力を嫌う怠惰によって、才能を磨かなかったから。
李徴自身が挙げるのは、才能不足が明らかになるかもしれないという「卑怯な危惧」と、刻苦を嫌う「怠惰」です。才能の有無を断定する問題ではなく、持っていた才能を磨かなかったことへの自己批判です。
戻るポイント:「卑怯な危惧」と「刻苦を厭う怠惰」の二点。
正解:A.立派な言葉を口にしながら、実際には努力せず行動しなかったから。
李徴は立派な警句を口にしながら、現実には失敗を恐れて刻苦を避けました。そのため自分の反省の言葉さえ、実行を伴わない「口先ばかりの警句」だったと自嘲しています。
戻るポイント:「口先ばかりの警句」と、その後の行動不足を対比。
正解:B.空費した人生への後悔と苦しみを、誰かに分かってもらえないかと思って咆えている。
李徴は、胸を焼かれるような悔いを訴える相手も手段もないため、月へ咆えるのだと自分で説明します。周囲の人には怒る虎の声としか聞こえない点が、理解されない孤独を深めています。
戻るポイント:「誰かにこの苦しみが分って貰えないか」。
正解:C.はくがくさいえい
「才穎」は才能が抜きん出ていることです。李徴の若いころの優秀さを示す冒頭の重要語句です。
戻るポイント:作者名・人物名と同様、漢字と読みをセットで。
正解:D.自分の考えを固く守り、他人と協調しにくいこと。
李徴の性格を表す語です。自分の信念に固執し、人と交わりにくい性質が、その後の孤立につながります。
戻るポイント:「狷介」と「倨傲」は近い場面で問われやすい。
正解:A.頼みにする。
「自ら恃むところ頗る厚く」は、自分の能力を非常に強く頼みにしていた、という意味です。
戻るポイント:「恃」は「頼る」の意味。
正解:B.問題にせず、相手として扱わない。
李徴は昔、同輩を鈍物として相手にもしませんでした。その相手の命令を受ける立場になったことが、自尊心を傷つけます。
戻るポイント:本文の前後関係と一緒に意味を覚える。
正解:C.おうおう/不満で心が晴れない様子。
復職した李徴が満たされず、不機嫌で楽しくない状態を表します。読みと意味の両方が出題されやすい語です。
戻るポイント:「怏々=おうおう=不満」。
正解:D.いふけんえん
畏怖は恐れること、嫌厭は嫌って避けることです。李徴は姿を見せれば、袁傪にこの感情を抱かせると考えます。
戻るポイント:畏怖と嫌厭を二語に分けて覚える。
正解:A.久しく会わなかった間のことを語り合う。
久闊は長く会わないこと、叙するは述べることです。再会した旧友同士が近況を語る場面に使われます。
戻るポイント:袁傪が馬を下り、叢の李徴と話す場面。
正解:B.言葉を伝えて書き記すこと。
李徴は記憶している詩を声で伝え、袁傪の部下が書き取ります。この行為が伝録です。
戻るポイント:記誦=暗記、伝録=伝えて記録、を区別。
正解:C.詩友と互いに励まし合い、作品や能力を磨くこと。
李徴は成長に必要な師や仲間との研鑽を避けました。「珠を磨く」比喩ともつながる語です。
戻るポイント:切磋琢磨をしなかったことが、才能の空費につながる。
正解:D.声を上げて激しく泣くこと。
妻子への依頼を語った後、叢の中から慟哭の声が聞こえます。単なる涙ではなく、声を上げて激しく泣くことです。
戻るポイント:慟哭=人の激しい泣き声、咆哮=獣のほえ声。
正解:A.生涯執着した詩を一部でも後代に残さなければ、死んでも死に切れないと思ったから。
李徴は、生涯を懸けた詩を一部でも後代に伝えなければ死んでも死に切れないと述べます。詩への執着は人間の李徴が残る証しですが、妻子の依頼より先にした順序は、後に本人が自己批判します。
戻るポイント:詩への執着の肯定面と批判面の両方を見る。
正解:B.素質は第一流だが、作品が第一流になるには微妙に欠けるところがある。
本文が確実に示すのは、袁傪が「素質は第一流だが、第一流の作品となるには非常に微妙な点で欠ける」と感じたことです。何が欠けるのかには複数の読みがあるため、この問題ではその中身を一つに断定しません。
戻るポイント:「才能がない」ではなく「素質はあるが作品に欠ける」。
正解:C.虎の中に、かつての詩人李徴がまだ生きている証しを示すため。
李徴自身が「虎の中に、まだ、かつての詩人李徴が生きているしるし」として即席の詩を作ります。詩の目的は本文に明示されているため、推測ではなくその言葉を根拠に答えられます。
戻るポイント:即席詩の前の「この虎の中に、まだ…李徴が生きているしるし」。
正解:D.草むらに潜む虎の李徴と、車に乗る高官の袁傪の現在。
同年に進士へ合格した二人の人生が大きく分かれたことを示します。李徴は異類として草むらに隠れ、袁傪は官吏として堂々と旅をしています。
戻るポイント:人物・場所・社会的立場の三つの対照。
正解:A.詩人として声を長く吟じることと、虎としてただ咆えること。
「長嘯」は人間・詩人として声を長く発すること、「嗥」は獣がほえることです。人間の詩心を残しながら、外形と声は虎になっている李徴の現在を対比しています。
戻るポイント:人間の内面/虎の外形、表現したい思い/伝わらない声。
正解:B.夜明けが近づき、李徴が人間の心で話せる時間と袁傪との別れが迫っていること。
残月・白露・冷風は夜明け前の時間と冷気を示します。夜明けが近づくほど李徴が虎へ戻る時間も迫るため、情景が会話の終わりと別れの切迫を支えています。
戻るポイント:自然描写は時間の進行と人物の心情に結び付ける。
正解:C.人間だったなら妻子のことを先に頼むべきであり、順序を誤った自分を批判している。
李徴は「本当は、先ず、この事の方を先にお願いすべきだったのだ、己が人間だったなら」と述べます。妻子への愛情がないと単純化するのではなく、詩業への執着が先に出た自分を本人が責めている点を押さえます。
戻るポイント:李徴を単純な悪人・家族思いのどちらか一方にしない。
正解:D.醜悪な姿を見せ、袁傪が再び会おうとして危険な道を通らないようにするため。
李徴は「勇に誇ろうとしてではない」と明確に否定し、醜悪な姿を見れば袁傪が再び会おうとは思わないだろうと説明します。同じ道を通らせず、友を襲う危険を避けるための行動です。
戻るポイント:否定表現「勇に誇ろうとしてではない」に注目。
正解:A.李徴が孤独・後悔・悲しみのために流した涙。
本文は「涙」と直接書かず、「夜露のためばかりではない」と別の原因を読ませます。直前の悔い・悲しみ・孤独を受け、毛皮を濡らした涙を婉曲に暗示する表現です。
戻るポイント:「ばかりではない」が、別の原因を読ませる合図。
正解:B.傷つくことを恐れて努力や他者との交流を避け、自分の性情に支配されて才能を空費し、妻子や友人も傷つけた。
これは作品の主題を唯一の一文に固定する問題ではなく、李徴自身の自己分析をまとめる問題です。李徴は臆病な自尊心と尊大な羞恥心、努力を避けた怠惰、詩業への執着が、自分・妻子・友人を損なったと語ります。
戻るポイント:才能・努力・他者・自意識・人間性を一つにつなげる。
本文表記と内容確認には青空文庫「山月記」を使用しています。出版社・教科書の版によって表記、改行、段落のまとめ方、ページ番号が異なる場合があります。学校の教科書・授業プリントの指示を優先してください。