鴻門之会の定期テスト対策50問|解答・解説・書き下し文・現代語訳

高校漢文 · 史記 · 項羽本紀

鴻門之会こうもんのかい/鴻門の会

定期テスト対策50問・書き下し文・現代語訳

『史記』「鴻門之会」のテスト対策50問と、原文・書き下し文・現代語訳を無料公開。劉邦の謝罪、項荘の剣舞、樊噲の弁論、劉邦の脱出を11場面で読み比べ、語句・句法・人物関係を解答と解説で確かめられます。

選択40問を自動採点記述10問に解答例原文と訳を見比べる

鴻門之会の現代語訳・書き下し文を場面から探す

掲載範囲は「沛公旦日従百余騎」から「立誅殺曹無傷」。原文・書き下し文・現代語訳を、同じ場面ごとに見比べられます。

本文の冒頭句から探す(全11場面)
  1. 01 劉邦の謝罪と曹無傷の密告冒頭:沛公旦日従百余騎来見項王
  2. 02 宴席の座り方と范増の目配せ冒頭:項王即日因留沛公与飲
  3. 03 項荘の剣舞(剣の舞)と項伯の守り冒頭:范増起、出召項荘
  4. 04 張良の説明と樊噲の申し出冒頭:於是張良至軍門、見樊噲
  5. 05 樊噲の登場と豪胆な飲食冒頭:噲即帯剣擁盾入軍門
  6. 06 樊噲の弁論と劉邦の功績冒頭:項王曰、壮士、能復飲乎
  7. 07 劉邦の脱出と「何辞為」冒頭:坐須臾、沛公起如廁
  8. 08 白璧・玉斗を託し、間道を帰る冒頭:良問曰、大王来何操
  9. 09 張良の謝罪と「沛公安在」冒頭:沛公已去、間至軍中
  10. 10 范増の怒りと「豎子不足与謀」冒頭:項王則受璧、置之坐上
  11. 11 劉邦の帰営と曹無傷の処刑冒頭:沛公至軍、立誅殺曹無傷

「剣の舞」などの教材名や採録範囲は教科書によって異なります。場面名と本文の冒頭句を照らし合わせてください。宴席以前の密告・項伯の夜訪は、あらすじで紹介しています。

鴻門之会のテスト対策問題50問|解答・解説付き

選択問題40問は、答えを選ぶとその場で採点・解説を確認できます。記述問題10問は、解答例と解説で自己採点しましょう。

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選択40問の問題・解答・解説を一覧で読む

一覧でも全問を学習できます。答えを考えてから、各問の解答を開きましょう。

選択問題 第1セット|問1〜10

人物関係本文・訳を確認

問1. 項羽の叔父で、宴席では体で劉邦をかばった人物は誰ですか。

  1. 項伯
  2. 項荘
  3. 曹無傷
  4. 范増
問1の解答・解説

正解:1. 項伯

項伯は項羽の叔父で、張良と旧交があります。項荘と同じく剣を抜きますが、目的は劉邦を守ることです。

問2. 「臣与将軍戮力而攻秦」の「戮力」の意味として適切なものはどれですか。

  1. 力を合わせる
  2. 力の強さを競う
  3. 力で相手を殺す
  4. 力を使い尽くす
問2の解答・解説

正解:1. 力を合わせる

臣与将軍戮力而攻秦

「戮力」は「力を戮(あ)はす」と読み、力を合わせることです。劉邦は、項羽と協力して秦を攻めた関係を述べています。「戮」を一字だけ見て「殺す」と解さないようにします。

問3. 「将軍戦河北、臣戦河南」の「河」が指すものはどれですか。

  1. 黄河
  2. 長江
  3. 関中のすべての川
  4. 鴻門の堀
問3の解答・解説

正解:1. 黄河

将軍戦河北、臣戦河南

ここで「河」は黄河です。「河北」は黄河の北、「河南」は黄河の南を指します。現代の行政区画名として読むのではなく、両者が戦った場所を黄河との位置関係で捉えます。

書き下し本文・訳を確認

問4. 「不然、籍何以至此」の書き下し文として、本文の意味に合うものはどれですか。

  1. 然らば、籍何を以てか此に至らん。
  2. 然らずんば、籍何を此に至るを以てす。
  3. 然らず、籍何を以て此に至れ。
  4. 然らずんば、籍何を以てか此に至らん。
問4の解答・解説

正解:4. 然らずんば、籍何を以てか此に至らん。

不然、籍何以至此

「不然」は「然らずんば(そうでなければ)」、「何以」は「何を以て」と読みます。曹無傷の密告がなければ、どうしてこのような事態に至ろうか、と項羽が反語で述べています。

問5. 「沛公旦日従百余騎」の意味として適切なものはどれですか。

  1. 劉邦は翌日、百騎余りを引き連れた
  2. 劉邦は毎朝、百騎余りを見送った
  3. 劉邦はその晩、百騎余りの後を追った
  4. 劉邦は翌日、百騎余りを降伏させた
問5の解答・解説

正解:1. 劉邦は翌日、百騎余りを引き連れた

旦日は翌日。従はここでは『従える』という意味で、劉邦が騎兵を引き連れる側です。

問6. 「令将軍与臣有郤」の意味として適切なものはどれですか。

  1. 将軍と私に協力させた
  2. 将軍と私に関所を守らせた
  3. 将軍と私に新しい命令を出した
  4. 将軍と私との間に不和を生じさせた
問6の解答・解説

正解:4. 将軍と私との間に不和を生じさせた

令は〜させる。郤は仲たがい・不和です。劉邦は、告げ口によって項羽との関係が悪くなったと弁明しています。

問7. 「亜父者、范増也」の文の働きとして適切なものはどれですか。

  1. 亜父と范増の強さを比較する
  2. 亜父が范増になりたいという願望を示す
  3. 范増が亜父に命令したことを示す
  4. 亜父と呼ばれる人物が范増だと説明する
問7の解答・解説

正解:4. 亜父と呼ばれる人物が范増だと説明する

亜父者、范増也

「A者、B也」は「Aとは、Bなり」と読み、Aが何者であるかを説明する判断の形です。「者」を「人」と訳して、亜父と范増を別の人物として捉えないようにします。

問8. 「范増数目項王」の意味として適切なものはどれですか。

  1. 范増は項羽の目をほめた
  2. 范増は項羽の人数を数えた
  3. 范増は何度も項羽に目配せした
  4. 范増は項羽を見失った
問8の解答・解説

正解:3. 范増は何度も項羽に目配せした

数は『しばしば』、目は動詞で『目配せする』。劉邦殺害を促す合図です。

問9. 范増の言う「君王為人不忍」は、項羽をどのような人物だと述べていますか。

  1. 人を殺すことをかわいそうに思い、実行するに忍びない人物
  2. 苦しい行軍に耐える体力を持たない人物
  3. 部下の忠告を聞くことが我慢できない人物
  4. 不満があると我慢できず、すぐ怒りを表す人物
問9の解答・解説

正解:1. 人を殺すことをかわいそうに思い、実行するに忍びない人物

君王為人不忍

「為人」は人柄、「不忍」はここでは残酷なことをするに忍びないという意味です。范増は、劉邦殺害の合図に項羽が応じなかったことを、この性格と結び付けて説明しています。

問10. 「軍中無以為楽」の「無以〜」の意味として適切なものはどれですか。

  1. 〜する必要がない
  2. 〜するための手段・ものがない
  3. 〜しないことはない
  4. 決して〜してはいけない
問10の解答・解説

正解:2. 〜するための手段・ものがない

軍中無以為楽

「無以〜」は「以て〜する無し」と読み、〜するための手段やものがないことを表します。項荘は陣中に楽しませるものがないと述べ、剣舞を申し出る口実にしています。

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選択問題 第2セット|問11〜20

行動理由本文・訳を確認

問11. 范増が項荘に「請以剣舞」と指示した本当の目的は何ですか。

  1. 項羽の剣術の腕を試すため
  2. 劉邦の謝罪を祝うため
  3. 剣舞の機会に劉邦を襲わせるため
  4. 樊噲を剣舞に参加させるため
問11の解答・解説

正解:3. 剣舞の機会に劉邦を襲わせるため

直後に『因撃沛公於坐、殺之』とあります。剣舞は余興を装った殺害の機会です。

問12. 「若属皆且為所虜」の『若属』と『為所虜』の意味の組み合わせはどれですか。

  1. お前たち/捕虜にされる
  2. もし仲間なら/捕虜を解放する
  3. 若い者たち/捕虜にならない
  4. 私たち/捕虜を捕らえる
問12の解答・解説

正解:1. お前たち/捕虜にされる

若はお前、属は仲間。為〜所…は受身を表し、ここでは捕らえる側の劉邦が省略されています。

問13. 「常以身翼蔽沛公」は、どのような行動ですか。

  1. 自分の体で翼を広げるように劉邦をかばう
  2. 劉邦を別室へ連れていく
  3. 翼の付いた盾を劉邦へ渡す
  4. 劉邦の前で鳥の舞を見せる
問13の解答・解説

正解:1. 自分の体で翼を広げるように劉邦をかばう

項伯が、自分の体を使って劉邦を覆い守ります。そのため項荘は劉邦を襲えませんでした。

書き下し本文・訳を確認

問14. 樊噲が尋ねる「今日之事何如」の読みと意味の組み合わせとして適切なものはどれですか。

  1. 今日の事何に如く/今日の出来事は何に似ているか
  2. 今日の事何れにか如く/今日はどこへ行くか
  3. 今日の事何ぞ如かん/今日の出来事に及ぶものがあろうか
  4. 今日の事何如(いかん)/今日の様子はどうか
問14の解答・解説

正解:4. 今日の事何如(いかん)/今日の様子はどうか

今日之事何如。良曰、甚急

「何如」は「いかん」と読み、状態や様子を尋ねます。張良の「甚急(非常に危険だ)」という返答からも、樊噲が宴席の状況を聞いていると分かります。

問15. 「臣請入」の「請」が表す意味として、最も適切なものはどれですか。

  1. 自分が入ることについて、相手の許可を求める
  2. 相手が入らない理由を、問いただす
  3. 相手に入るよう、命令する
  4. 自分が入ったことを、過去の事実として伝える
問15の解答・解説

正解:1. 自分が入ることについて、相手の許可を求める

臣請入

「請」は、自分がこれから行うことについて許可を求める表現です。「臣請ふ入らん」は「どうか私を入らせてください」と訳します。

問16. 「交戟之衛士欲止不内」の「内」の意味として適切なものはどれですか。

  1. 心の中で考える
  2. 中へ入れる
  3. 内側へ隠れる
  4. 内部を調べる
問16の解答・解説

正解:2. 中へ入れる

交戟之衛士欲止不内

「内」は「納」に通じ、ここでは中へ入れるという意味です。戟を交差させた衛兵たちが、樊噲を止め、入れまいとした場面です。入場を妨げられた側は樊噲です。

人物・内容本文・訳を確認

問17. 「樊噲側其盾以撞、衛士仆地」の動作の関係として正しいものはどれですか。

  1. 樊噲が盾を地面に置き、衛兵がその上に座った
  2. 樊噲が盾を横にして突き当たり、衛兵が地面に倒れた
  3. 衛兵が盾を横にして突き当たり、樊噲が地面に倒れた
  4. 衛兵が樊噲の盾を取り上げ、地面に投げ捨てた
問17の解答・解説

正解:2. 樊噲が盾を横にして突き当たり、衛兵が地面に倒れた

樊噲側其盾以撞、衛士仆地

「側其盾以撞」の主語は樊噲ですが、「仆地」の主語は衛士です。樊噲が盾を横向きにして突き当たり、衛兵を倒して中へ進みます。文の途中で主語が変わる点に注意します。

問18. 「瞋目視項王」の「瞋目」が表す様子はどれですか。

  1. 目を閉じて恐怖に耐える様子
  2. 目を伏せて敬意を示す様子
  3. 涙で目が見えなくなる様子
  4. 怒って目を大きく見開く様子
問18の解答・解説

正解:4. 怒って目を大きく見開く様子

瞋目視項王、頭髪上指、目眥尽裂

「瞋目」は怒って目を見開くことです。樊噲は幕を開いて立ち、項羽をにらみます。続く髪や目尻の描写と合わせて、樊噲の激しい怒りと迫力を読み取ります。

問19. 「頭髪上指」の「上」の働きと、文の意味の組み合わせとして適切なものはどれですか。

  1. 方向を表す修飾語/髪が上に向かって逆立つ
  2. 目的語/髪が項羽の上半身を指す
  3. 主語/上の者が樊噲の髪を指さす
  4. 時を表す修飾語/髪が以前から逆立っていた
問19の解答・解説

正解:1. 方向を表す修飾語/髪が上に向かって逆立つ

頭髪上指

「上」は「上に」と動作の方向を示します。「指」はここでは指を使う動作ではなく、まっすぐ向くこと。怒りによって樊噲の髪が上へ逆立つ様子を描いています。

人物・内容本文・訳を確認

問20. 「樊噲覆其盾於地、加彘肩上、抜剣切而啗之」の内容として正しいものはどれですか。

  1. 豚の肩肉を地面に置き、盾で切り分けた
  2. 盾に酒を注ぎ、剣でかき混ぜて飲んだ
  3. 盾を地面に伏せて肩肉を載せ、剣で切って食べた
  4. 剣を地面に置き、肩肉を盾で覆って隠した
問20の解答・解説

正解:3. 盾を地面に伏せて肩肉を載せ、剣で切って食べた

樊噲覆其盾於地、加彘肩上、抜剣切而啗之

樊噲は盾を地面に伏せ、その上に豚の肩肉を置き、抜いた剣で切って食べています。「啗」は食べること。「之」は直前の剣ではなく、食べる対象である肩肉を指します。

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選択問題 第3セット|問21〜30

問21. 「豪毛不敢有所近」によって、樊噲は劉邦のどのような行動を述べていますか。

  1. 項羽に近づくことを少しも恐れなかった
  2. 財物を一つ残らず自分のものにした
  3. 兵士の髪を一本も切らせなかった
  4. 秦の財物にほんのわずかも手を付けなかった
問21の解答・解説

正解:4. 秦の財物にほんのわずかも手を付けなかった

豪毛不敢有所近、封閉宮室

「豪毛」は細い毛から、ごくわずかなものをたとえます。「不敢有所近」は、手を出そうとしなかったということ。宮殿を封鎖した行動と合わせ、劉邦が私欲で財物を奪わなかったと弁護しています。

問22. 「而聴細説」の「細説」の意味として適切なものはどれですか。

  1. 細部まで正確に述べた報告
  2. つまらない告げ口
  3. 小声で述べた作戦の提案
  4. 礼儀正しく述べた謝罪
問22の解答・解説

正解:2. つまらない告げ口

而聴細説、欲誅有功之人

「細説」はここでは、つまらない告げ口・讒言です。現代語の「詳しい説明」の意味で読むと、樊噲が項羽を批判する理由を取り違えます。

問23. 「還軍霸上」の「軍」の意味として適切なものはどれですか。

  1. 軍を駐屯させる
  2. 敵の軍を攻める
  3. 兵士を徴集する
  4. 軍隊を解散する
問23の解答・解説

正解:1. 軍を駐屯させる

還軍霸上、以待大王来

「軍」はここでは動詞で、軍を駐屯させることです。「還りて霸上に軍す」と読み、劉邦が霸上に戻って駐屯したことを表します。

人物・内容本文・訳を確認

問24. 「夫秦王有虎狼之心」の「虎狼之心」は、後に続く行動と合わせると何を表していますか。

  1. 戦場で恐れず前進する勇気
  2. 仲間を家族のように守る心
  3. 獲物を見つける注意深さ
  4. 人をむやみに殺し、厳罰を加える残酷さ
問24の解答・解説

正解:4. 人をむやみに殺し、厳罰を加える残酷さ

夫秦王有虎狼之心、殺人如不能挙、刑人如恐不勝

後続の「殺人如不能挙」「刑人如恐不勝」は、人を殺し尽くし、罰し尽くそうとする秦王の行動を述べます。この文脈で虎や狼にたとえられるのは、勇敢さではなく残酷さです。

問25. 「臣死且不避、卮酒安足辞」の内容として適切なものはどれですか。

  1. 酒を断れば死なずに済むと考えている
  2. 死すら避けないのだから、一杯の酒など断らない
  3. 酒に酔って死を考えなくなった
  4. 死にたくないので、酒を飲むのを避ける
問25の解答・解説

正解:2. 死すら避けないのだから、一杯の酒など断らない

死でさえ避けないという強調に続き、一杯の酒をどうして辞退しようか、と反語で述べています。

問26. 「備他盗出入与非常也」の『非常』は何を指しますか。

  1. とても厳しい命令
  2. 不測の事態
  3. 非常に大きな功績
  4. 普段と違う宴席
問26の解答・解説

正解:2. 不測の事態

古典の『非常』は、ここでは予期しない異変・不測の事態。関所を守る理由を説明しています。

問27. 樊噲が「此亡秦之続耳」と批判したのは、項羽のどのような行動ですか。

  1. 功績のある劉邦を告げ口によって殺そうとすること
  2. 秦の宮殿を封鎖したこと
  3. 劉邦を宴席に招いたこと
  4. 劉邦に先に咸陽へ入るよう命じたこと
問27の解答・解説

正解:1. 功績のある劉邦を告げ口によって殺そうとすること

樊噲は、劉邦の功績に報いず、つまらない告げ口を聞いて殺そうとするのは、滅びた秦のやり方と同じだと批判します。

問28. 「項王使都尉陳平召沛公」の命令の関係として正しいものはどれですか。

  1. 項羽が陳平に命じて、劉邦を呼び戻させる
  2. 劉邦が陳平に命じて、項羽を呼び出させる
  3. 項羽が劉邦に命じて、陳平を呼び出させる
  4. 陳平が項羽に命じて、劉邦を呼び戻させる
問28の解答・解説

正解:1. 項羽が陳平に命じて、劉邦を呼び戻させる

項王使都尉陳平召沛公

「使A〜」は「Aをして〜しむ」という使役です。「項王、都尉陳平をして沛公を召さしむ」と読みます。命じるのは項羽、実際に呼びに行くのは陳平、呼ばれるのは劉邦です。

問29. 「沛公起如廁」の『如』の意味はどれですか。

  1. 〜のようだ
  2. 〜に及ぶ
  3. 行く
  4. もし〜なら
問29の解答・解説

正解:3. 行く

如はここでは行く。劉邦は便所へ行くために立ち、その機会に樊噲を呼び出します。

問30. 「人方為刀俎、我為魚肉」の対応として適切なものはどれですか。

  1. 刀俎=劉邦側、魚肉=項羽側
  2. 刀俎=項羽側、魚肉=劉邦側
  3. 刀俎=秦王、魚肉=項羽と劉邦
  4. 刀俎=張良だけ、魚肉=樊噲だけ
問30の解答・解説

正解:2. 刀俎=項羽側、魚肉=劉邦側

相手が切る道具、こちらが切られる食材という比喩で、項羽側が劉邦側の生死を左右できる危険な状況を示します。

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選択問題 第4セット|問31〜40

問31. 「何辞為」の意味として最も適切なものはどれですか。

  1. どこで別れの挨拶をしたのか
  2. どうして別れの挨拶をする必要があろうか、いや、ない
  3. どのような言葉で謝罪するのか
  4. どの酒なら辞退してもよいのか
問31の解答・解説

正解:2. どうして別れの挨拶をする必要があろうか、いや、ない

何〜為は反語。ここで辞は、酒を断ることでも謝罪でもなく、辞去の挨拶をすることです。

書き下し本文・訳を確認

問32. 「大王来何操」の書き下しと意味の組み合わせとして適切なものはどれですか。

  1. 大王来たるに何をか操る/大王は何を持って来られたか
  2. 大王来たること何如/大王が来られた様子はどうか
  3. 大王何ぞ来たりて操らん/大王が来て指揮するはずがない
  4. 大王何れにか来たりて操る/大王はどこへ軍を進めるか
問32の解答・解説

正解:1. 大王来たるに何をか操る/大王は何を持って来られたか

大王来何操

「操」は携える・持つという意味です。目的語になる疑問代名詞「何」が、動詞「操」の前に置かれています。劉邦が白璧と玉斗について答えることからも、持参した品を尋ねていると分かります。

問33. 「会其怒、不敢献」の「会」の意味として適切なものはどれですか。

  1. 会議を開く
  2. たまたま出くわす
  3. 意見が一致する
  4. 再会を約束する
問33の解答・解説

正解:2. たまたま出くわす

会其怒、不敢献

「会」はここでは、たまたま出くわす・遭うという意味です。劉邦は、相手が怒っていたため、用意した贈り物を差し出せなかったと張良に説明しています。

問34. 張良が劉邦の代わりに渡した品の組み合わせはどれですか。

  1. 項羽に剣、范増に盾
  2. 項伯に白璧、項荘に玉斗
  3. 項羽に玉斗、范増に白璧
  4. 項羽に白璧、范増に玉斗
問34の解答・解説

正解:4. 項羽に白璧、范増に玉斗

白璧一双は項羽、玉斗一双は亜父こと范増へ。受け取った後の両者の行動の違いも確認しましょう。

問35. 「脱身独騎」と、続く樊噲ら四人の描写を合わせた理解として適切なものはどれですか。

  1. 劉邦と樊噲ら五人全員が馬に乗った
  2. 劉邦一人が騎乗し、四人が徒歩で付き添った
  3. 劉邦は徒歩で、樊噲ら四人が馬に乗った
  4. 劉邦だけが帰り、樊噲らは宴席に残った
問35の解答・解説

正解:2. 劉邦一人が騎乗し、四人が徒歩で付き添った

独騎だけを見て完全な単独行動と読まないようにします。続く文では四人が剣と盾を持って歩走したとあります。

行動理由本文・訳を確認

問36. 劉邦が張良へ「度我至軍中、公乃入」と命じた意図は何ですか。

  1. 項羽を自軍まで迎えに行かせるため
  2. 安全に帰営する時間を確保してから、張良に宴席で挨拶させるため
  3. 樊噲の剣舞が終わるのを待つため
  4. 張良に先に帰営してもらうため
問36の解答・解説

正解:2. 安全に帰営する時間を確保してから、張良に宴席で挨拶させるため

劉邦が自軍へ着いたと見計らってから、張良が宴席へ入ります。脱出の安全を確保するための時間差です。

人物・内容本文・訳を確認

問37. 張良が述べる「沛公不勝桮杓」は、劉邦が挨拶できなかった理由をどのように説明した言葉ですか。

  1. 飲み比べに負けたことが悔しかった
  2. 酒に耐えられず、酔ってしまった
  3. 杯やひしゃくの重さに耐えられなかった
  4. 贈り物の値打ちで項羽に勝てなかった
問37の解答・解説

正解:2. 酒に耐えられず、酔ってしまった

沛公不勝桮杓、不能辞

「桮杓」は杯とひしゃくから酒を表し、「不勝」は「勝(た)へず」と読みます。張良は酒に耐えられなかったと説明していますが、実際の劉邦は命の危険を避けて脱出しています。

問38. 「沛公安在」の書き下しと意味として適切なものはどれですか。

  1. 沛公在るに安し/劉邦がいるので安心だ
  2. 沛公安んぞ在らん/劉邦がいるはずはない
  3. 沛公安し/劉邦は無事だ
  4. 沛公安(いづ)くにか在る/劉邦はどこにいるのか
問38の解答・解説

正解:4. 沛公安(いづ)くにか在る/劉邦はどこにいるのか

安はここでは『いづくに』と読み、場所を尋ねます。疑問と反語を形だけで決めず、項羽が劉邦の所在を尋ねる文脈で判断します。

人物の心情本文・訳を確認

問39. 范増が玉斗を砕いた行動と、その後の発言から読み取れることはどれですか。

  1. 劉邦を逃した項羽への怒りと、将来への危機感
  2. 張良を自分の後継者にする決意
  3. 項羽が劉邦を殺したことへの抗議
  4. 贈り物の価値が低いことへの不満
問39の解答・解説

正解:1. 劉邦を逃した項羽への怒りと、将来への危機感

『豎子不足与謀』に項羽への失望、『奪項王天下者、必沛公也』に劉邦への警戒が表れています。

問40. 「沛公至軍、立誅殺曹無傷」の『立』の意味と、冒頭とのつながりはどれですか。

  1. ただちに/曹無傷が密告者だと項羽が明かしていたため
  2. 立場上/曹無傷が項羽の叔父だったため
  3. 立ち上がって/曹無傷が剣舞をしたため
  4. 立ち止まって/曹無傷が帰営を妨げたため
問40の解答・解説

正解:1. ただちに/曹無傷が密告者だと項羽が明かしていたため

立は『ただちに』。謝罪の場面で項羽が密告者の名を明かしたことが、曹無傷の処刑へつながります。

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鴻門之会の記述問題10問|解答例と答え方

問41〜50は記述問題です。人物の目的や本文の根拠を具体的に示し、解答例と意味が合うか確かめましょう。授業で指定された解釈がある場合は、そちらを優先してください。

問41. 項荘と項伯はどちらも剣を抜いて舞っています。二人の目的の違いを説明しなさい。

問41の解答例・解説

解答例:項荘は剣舞に乗じて劉邦を殺そうとし、項伯は自分の体で劉邦をかばって、その殺害を防ごうとした。

「因撃沛公於坐、殺之」と「常以身翼蔽沛公」を根拠に、同じ動作と反対の目的を対応させます。

問42. 樊噲が「此亡秦之続耳」と述べたのは、項羽のどのような行動を批判するためですか。

問42の解答例・解説

解答例:秦を破った劉邦に大きな功績があるのに褒賞を与えず、つまらない告げ口を聞いて殺そうとする行動が、秦の暴政と同じだと批判するため。

「労苦而功高」「未有封侯之賞」「聴細説」「欲誅有功之人」の関係を押さえます。単に『項羽が残酷だから』で終わらせません。

問43. 「人方為刀俎、我為魚肉」は、誰と誰のどのような関係を表していますか。

問43の解答例・解説

解答例:項羽側が劉邦側の生死を左右できる立場にあり、劉邦側は抵抗しにくく、殺されかねない危険な状態にあるという関係。

刀俎=項羽側、魚肉=劉邦側と対応させ、単なる勢力差だけでなく、目前の命の危険を説明します。

問44. 劉邦が張良に「度我至軍中、公乃入」と命じた理由を説明しなさい。

問44の解答例・解説

解答例:自分が安全に自軍へ戻るまで、宴席に戻らないことを項羽側へ正式に伝えるのを遅らせ、脱出の安全を確保するため。

劉邦は危険な宴席から逃れる途中です。張良が挨拶に戻る時点と、劉邦の帰営の時点との順序が重要です。

問45. 范増が玉斗を砕いた理由を、その後の発言を踏まえて説明しなさい。

問45の解答例・解説

解答例:劉邦を殺す機会を項羽が逃したことに怒り、劉邦が将来、項羽の天下を奪って自分たちを捕虜にすると考えたから。

「豎子不足与謀」に表れる項羽への失望と、「奪項王天下者、必沛公也」に表れる劉邦への警戒を両方入れます。

問46. 謝罪の場面で、劉邦は項羽の怒りを和らげるためにどのような説明をしていますか。「戮力」と「不自意」に着目し、二つの点を挙げて説明しなさい。

問46の解答例・解説

解答例:項羽と力を合わせて秦を攻めてきたことを述べて協力関係を強調し、自分が先に関中へ入って秦を破ったことは予想外だったと説明して、項羽に対抗したわけではないと伝えようとしている。

臣与将軍戮力而攻秦/然不自意能先入関破秦

「戮力」は力を合わせること、「不自意」は自分でも思いがけなかったことです。二つの語の意味だけで終わらず、協力してきた関係と、先に秦を破ったことについての弁明を結び付けます。劉邦の説明の仕方を問う問題なので、それが本心だったとまで断定する必要はありません。

問47. 樊噲の入場から飲食までの描写には、彼の豪胆さがどのように表れていますか。具体的な行動を二つ挙げて説明しなさい。

問47の解答例・解説

解答例:入場を妨げる兵士を盾で突き倒して宴席へ進み、さらに、与えられた生の豚の肩肉を地面に伏せた盾に載せ、剣で切って食べている。このように、危険な場でもひるまず大胆に振る舞っている。

樊噲側其盾以撞、衛士仆地/樊噲覆其盾於地、加彘肩上、抜剣切而啗之

「勇敢だ」「強い」だけでなく、本文にある具体的な行動を根拠にします。項羽をにらみつけたことや、大きな杯の酒を立ったまま飲んだことを挙げても、豪胆さとのつながりを説明できていればよいでしょう。

問48. 「項王按剣而跽」から「壮士、賜之卮酒」までの項羽の態度は、どのように変化していますか。行動と言葉を根拠に説明しなさい。

問48の解答例・解説

解答例:初めは剣に手をかけて身構え、突然入ってきた樊噲を警戒して身元を尋ねているが、張良の紹介を受けると、樊噲を勇ましい男だと認め、酒を与えてもてなす態度に変わっている。

項王按剣而跽曰、客何為者/項王曰、壮士、賜之卮酒

「按剣而跽」という動作と、「客何為者」という問いを、初めの警戒の根拠にします。その後の「壮士」という評価と、酒を与える命令を対応させます。この場面だけから、項羽が劉邦側を全面的に信用したとまではいえません。

問49. 樊噲は、劉邦が項羽に敵対しているわけではないことを、どのような行動を挙げて説明していますか。財物・駐屯・関所の三点から説明しなさい。

問49の解答例・解説

解答例:財物に少しも手を付けず宮殿を封じ、霸上へ戻って項羽の到着を待っていると述べている。また、関所を守らせたのは項羽を拒むためではなく、盗賊の侵入や不測の事態に備えるためだと説明している。

豪毛不敢有所近、封閉宮室、還軍霸上、以待大王来/備他盗出入与非常也

「豪毛不敢有所近」「還軍霸上、以待大王来」「備他盗出入与非常也」を、樊噲が弁護のために挙げた根拠として整理します。これは樊噲の説明を読み取る設問であり、劉邦の実際の動機を断定する設問ではありません。

問50. 張良は、劉邦が別れの挨拶をしなかった理由をどのように説明していますか。また、本文に描かれた脱出の経緯とはどのような違いがありますか。

問50の解答例・解説

解答例:張良は、劉邦が酒に耐えられず挨拶をできなかったと説明している。一方、本文では劉邦が挨拶をしていないことを気にかけたものの、樊噲から目前の命の危険を指摘され、挨拶より安全な脱出を優先して立ち去っている。

沛公不勝桮杓、不能辞/今者出、未辞也/如今人方為刀俎、我為魚肉、何辞為/於是遂去

張良の「沛公不勝桮杓、不能辞」と、劉邦・樊噲の退出時の会話を比べます。酒に耐えられなかったという説明の真偽を断定するのではなく、張良が宴席で述べた理由と、本文が描く脱出の判断を区別します。

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鴻門之会の現代語訳・書き下し文・原文|11場面の対照

『史記』巻七・項羽本紀の「沛公旦日従百余騎」から「立誅殺曹無傷」まで、宴席から帰営までの場面を掲載しています。それ以前の曹無傷の密告・項伯の夜訪などは、あらすじで紹介しています。原文の一部を日本の通用字体に改め、句読点を補いました。書き下し文・現代語訳・問題は本ページ用に作成したものです。教科書によって採録範囲・字体・訓読・解釈が異なるため、授業の指定を優先してください。

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01劉邦の謝罪と曹無傷の密告

原文|劉邦の謝罪と曹無傷の密告

沛公旦日従百余騎来見項王、至鴻門、謝曰、『臣与将軍戮力而攻秦、将軍戦河北、臣戦河南。然不自意能先入関破秦、得復見将軍於此。今者有小人之言、令将軍与臣有郤。』項王曰、『此沛公左司馬曹無傷言之。不然、籍何以至此。』

書き下し文|劉邦の謝罪と曹無傷の密告

沛公、旦日百余騎を従へて来たりて項王に見え、鴻門に至り、謝して曰はく、『臣、将軍と力を戮(あ)はせて秦を攻め、将軍は河北に戦ひ、臣は河南に戦ふ。然れども自ら能く先に関に入りて秦を破り、復た将軍に此に見ゆるを得んとは意(おも)はざりき。今者、小人の言有り、将軍と臣とをして郤(げき)有らしむ。』項王曰はく、『此れ沛公の左司馬曹無傷之を言へり。然らずんば、籍何を以てか此に至らん。』と。

現代語訳|劉邦の謝罪と曹無傷の密告

劉邦は翌日、百騎余りを引き連れて項羽に会いに来ました。鴻門に着くと、謝罪して言います。「私は将軍と力を合わせて秦を攻め、将軍は黄河の北で、私は黄河の南で戦いました。しかし、私が先に関中へ入って秦を破り、ここで再び将軍にお会いできるとは思ってもいませんでした。今、つまらない者の告げ口によって、将軍と私との間に仲たがいが生じています。」項羽は答えました。「それは、お前の左司馬の曹無傷が言ったのだ。そうでなければ、私がどうしてこのような事態に至ろうか。」

読み方のポイント:「旦日」は翌日、「従」は従える、「謝」はここでは謝罪する。「河北・河南」の河は黄河です。「郤」は不和・仲たがい。「令A与B有郤」はAとBとの間に不和を生じさせる使役の表現です。項羽が密告者を明かすことが、最後の曹無傷殺害につながります。

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02宴席の座り方と范増の目配せ

原文|宴席の座り方と范増の目配せ

項王即日因留沛公与飲。項王・項伯東向坐。亜父南向坐。亜父者、范増也。沛公北向坐、張良西向侍。范増数目項王、挙所佩玉玦以示之者三、項王黙然不応。

書き下し文|宴席の座り方と范増の目配せ

項王、即日因りて沛公を留めて与に飲む。項王・項伯は東に向かひて坐す。亜父は南に向かひて坐す。亜父とは、范増なり。沛公は北に向かひて坐し、張良は西に向かひて侍す。范増、数(しばしば)項王に目し、佩(お)ぶる所の玉玦(ぎょくけつ)を挙げて以て之に示すこと三たびす。項王、黙然として応ぜず。

現代語訳|宴席の座り方と范増の目配せ

項羽はその日、劉邦を引き留めて一緒に酒を飲みました。項羽と項伯は東向きに、亜父は南向きに座ります。亜父とは范増のことです。劉邦は北向きに座り、張良は西向きに付き添っています。范増は何度も項羽に目配せをし、身に付けていた玉玦を三度持ち上げて合図しました。しかし、項羽は黙って応じません。

読み方のポイント:「数」は回数を数える動詞ではなく「しばしば・たびたび」、「目」は目配せするという動詞です。范増の合図は劉邦を殺す決断を促すもの。「玉玦」の「玦」は「決」と音が通じるとされます。公開原文には「玉珪」とする本文もありますが、ここは学習用本文にも見られる「玉玦」を採用しています。

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03項荘の剣舞(剣の舞)と項伯の守り

原文|項荘の剣舞(剣の舞)と項伯の守り

范増起、出召項荘、謂曰、『君王為人不忍。若入前為寿。寿畢、請以剣舞、因撃沛公於坐、殺之。不者、若属皆且為所虜。』荘則入為寿。寿畢、曰、『君王与沛公飲、軍中無以為楽。請以剣舞。』項王曰、『諾。』項荘抜剣起舞、項伯亦抜剣起舞、常以身翼蔽沛公、荘不得撃。

書き下し文|項荘の剣舞(剣の舞)と項伯の守り

范増起ち、出でて項荘を召し、謂ひて曰はく、『君王、人と為り忍びず。若(なんぢ)入りて前(すす)みて寿を為せ。寿畢はらば、請ひて剣を以て舞ひ、因りて沛公を坐に撃ちて、之を殺せ。然らずんば、若が属皆且(まさ)に虜にする所と為らんとす。』と。荘則ち入りて寿を為す。寿畢はりて曰はく、『君王、沛公と飲むも、軍中以て楽を為す無し。請ふ剣を以て舞はん。』と。項王曰はく、『諾。』と。項荘、剣を抜き起ちて舞ふ。項伯も亦た剣を抜き起ちて舞ひ、常に身を以て沛公を翼蔽す。荘、撃つを得ず。

現代語訳|項荘の剣舞(剣の舞)と項伯の守り

范増は立ち上がって外へ出ると項荘を呼び、言いました。「大王は心がやさしく、殺すに忍びないのだ。お前が中へ入り、進み出て長寿を祝え。それが終わったら剣舞を願い出て、その機会に席上の劉邦を襲い、殺せ。そうしなければ、お前たちは皆、やがて捕虜にされてしまうぞ。」項荘は入り、長寿を祝いました。その後、「大王と劉邦がお酒を飲んでおられるのに、陣中には楽しませるものがありません。どうか剣舞をさせてください」と申し出ます。項羽が許可すると、項荘は剣を抜いて立ち、舞い始めました。項伯も剣を抜いて舞い、絶えず自分の体で翼を広げるように劉邦を覆い守ったので、項荘は襲えませんでした。

読み方のポイント:「若」はここでは「もし」ではなく、お前。「為寿」は長寿を祝うこと。「因」はその機会に乗じて。「為所虜」は捕虜にされるという受身です。「翼蔽」は鳥が翼を広げて覆うようにかばうこと。剣を抜いた二人の目的が正反対である点を読み取ります。

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04張良の説明と樊噲の申し出

原文|張良の説明と樊噲の申し出

於是張良至軍門、見樊噲。樊噲曰、『今日之事何如。』良曰、『甚急。今者項荘抜剣舞、其意常在沛公也。』噲曰、『此迫矣。臣請入、与之同命。』

書き下し文|張良の説明と樊噲の申し出

是に於いて張良、軍門に至り、樊噲に見ゆ。樊噲曰はく、『今日の事何如。』と。良曰はく、『甚だ急なり。今者、項荘剣を抜きて舞ふ。其の意常に沛公に在るなり。』と。噲曰はく、『此れ迫れり。臣請ふ入りて、之と命を同じくせん。』と。

現代語訳|張良の説明と樊噲の申し出

そこで張良は陣営の門へ行き、樊噲に会いました。樊噲が「今日の様子はどうですか」と聞くと、張良は答えます。「非常に危険です。今、項荘が剣を抜いて舞っていますが、その狙いはずっと劉邦に向けられています。」樊噲は言いました。「それは差し迫った事態です。どうか私を中へ入らせてください。劉邦と生死を共にしましょう。」

読み方のポイント:「何如」は状態を尋ねる「いかん」。「其」は項荘を指し、「意」は剣舞の背後にある意図です。「請」は、自分が行動することへの許可を求める語。「与之同命」の「之」は本ページでは劉邦と解し、生死を共にする覚悟と読みます。指示対象の解釈が授業・教材で異なる場合は、指定された読みを優先してください。

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05樊噲の登場と豪胆な飲食

原文

原文|樊噲の登場と豪胆な飲食

噲即帯剣擁盾入軍門。交戟之衛士欲止不内、樊噲側其盾以撞、衛士仆地。噲遂入、披帷西向立、瞋目視項王、頭髪上指、目眥尽裂。項王按剣而跽曰、『客何為者。』張良曰、『沛公之参乗樊噲者也。』項王曰、『壮士、賜之卮酒。』則与斗卮酒。噲拝謝、起、立而飲之。項王曰、『賜之彘肩。』則与一生彘肩。樊噲覆其盾於地、加彘肩上、抜剣切而啗之。

書き下し文

書き下し文|樊噲の登場と豪胆な飲食

噲即ち剣を帯び盾を擁して軍門に入る。交戟の衛士、止めて内(い)れざらんと欲す。樊噲、其の盾を側(そばだ)てて以て撞(つ)く。衛士、地に仆(たふ)る。噲遂に入り、帷(とばり)を披(ひら)きて西に向かひて立ち、目を瞋(いか)らして項王を視る。頭髪、上(かみ)を指し、目眥(もくし)尽く裂く。項王、剣を按(あん)じて跽(き)して曰はく、『客は何為(なんす)る者ぞ。』と。張良曰はく、『沛公の参乗(さんじょう)、樊噲なる者なり。』と。項王曰はく、『壮士なり。之に卮酒(ししゅ)を賜へ。』と。則ち斗卮(とし)の酒を与ふ。噲、拝謝して起ち、立ちて之を飲む。項王曰はく、『之に彘肩(ていけん)を賜へ。』と。則ち一の生彘肩を与ふ。樊噲、其の盾を地に覆せ、彘肩を上に加へ、剣を抜きて切りて之を啗(くら)ふ。

現代語訳

現代語訳|樊噲の登場と豪胆な飲食

樊噲はすぐに剣を腰に帯び、盾を抱えて陣営の門へ入りました。戟を交差させて門を守っていた兵士が引き止めて中に入れまいとしたので、樊噲は盾を斜めに構えて突き当てました。兵士は地面に倒れます。樊噲はそのまま中へ入り、幕を開いて西を向いて立ち、目を大きく見開いて項羽をにらみました。髪は逆立ち、目じりは裂けるほどです。項羽は剣に手をかけ、ひざをついたまま上体を起こして身構え、「その者は何者か」と尋ねました。張良が「劉邦の護衛を務める樊噲という者です」と答えると、項羽は「勇ましい男だ。この者に杯の酒を与えよ」と命じます。そこで、大きな杯に入った酒が与えられました。樊噲は礼をして感謝し、立ち上がると、そのまま立って酒を飲みます。項羽は「この者に豚の肩肉を与えよ」と言い、生の豚の肩肉一塊が与えられました。樊噲は盾を裏返して地面に置き、その上に肩肉を載せると、剣を抜き、切って食べました。

読み方のポイント:「内」は「入れる」の意味で「いれる」と読みます。「目眥」は目じり。髪や目の描写は樊噲の激しい気迫を強調しています。「跽」はひざをついたまま上体を起こすこと。「参乗」は戦車に同乗する護衛役です。「拝謝」の「謝」は、冒頭の劉邦の謝罪とは異なり、礼を述べて感謝する意味。「彘」は豚、「啗」は食べることです。「斗卮」は大きな杯を指します。現代の一斗の量にそのまま換算しないようにしましょう。

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06樊噲の弁論と劉邦の功績

原文|樊噲の弁論と劉邦の功績

項王曰、『壮士、能復飲乎。』樊噲曰、『臣死且不避、卮酒安足辞。夫秦王有虎狼之心、殺人如不能挙、刑人如恐不勝、天下皆叛之。懐王与諸将約曰、「先破秦入咸陽者王之。」今沛公先破秦入咸陽、豪毛不敢有所近、封閉宮室、還軍霸上、以待大王来。故遣将守関者、備他盗出入与非常也。労苦而功高如此、未有封侯之賞、而聴細説、欲誅有功之人。此亡秦之続耳、窃為大王不取也。』項王未有以応、曰、『坐。』樊噲従良坐。

書き下し文|樊噲の弁論と劉邦の功績

項王曰はく、『壮士、能く復た飲むか。』と。樊噲曰はく、『臣、死すら且つ避けず。卮酒(ししゅ)安んぞ辞するに足らん。夫れ秦王は虎狼の心有り、人を殺すこと挙ぐる能はざるがごとく、人を刑すること勝(た)へざるを恐るるがごとくして、天下皆之に叛けり。懐王、諸将と約して曰はく、「先に秦を破りて咸陽に入る者は之に王たらしめん。」と。今、沛公先に秦を破りて咸陽に入り、豪毛も敢へて近づくる所有らず、宮室を封閉し、還りて霸上に軍し、以て大王の来たるを待つ。故に将を遣はして関を守らしむるは、他盗の出入と非常とに備ふるなり。労苦して功高きこと此くのごときに、未だ封侯の賞有らずして、細説を聴き、有功の人を誅せんと欲す。此れ亡秦の続のみ。窃かに大王の為に取らざるなり。』と。項王未だ以て応ふる有らず、曰はく、『坐せ。』と。樊噲、良に従ひて坐す。

現代語訳|樊噲の弁論と劉邦の功績

項羽は「勇ましい男だ。まだ飲めるか」と尋ねました。樊噲は答えます。「私は死ぬことさえ避けません。一杯の酒など、どうして断りましょう。あの秦王には虎や狼のように残酷な心があり、人を殺し尽くせないとでもいうように殺し、刑罰を加え尽くせないことを恐れるかのように罰したため、天下の人々が皆、背きました。懐王は諸将と、先に秦を破って咸陽に入った者をその地の王にすると約束しました。今、劉邦は先に秦を破って咸陽に入りましたが、財物にはほんのわずかも手を付けず、宮殿を封じ、霸上へ戻って駐屯し、大王を待っています。将軍を派遣して関所を守らせたのは、ほかの盗賊の侵入や不測の事態に備えるためです。これほど苦労して大きな功績を挙げたのに、諸侯に取り立てる褒賞もなく、つまらない告げ口を聞き入れて、功績のある人を殺そうとなさる。これでは滅んだ秦のやり方の繰り返しです。大王のためにも、私は賛成できません。」項羽は返す言葉がなく、「座れ」と言いました。樊噲は張良のそばに座ります。

読み方のポイント:「死且不避」は死でさえ避けないという強調。「安足辞」はどうして断るほどのことがあろうかという反語です。「非常」は並外れている意味ではなく、不測の事態。「細説」は詳細な説明ではなく、つまらない告げ口です。

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07劉邦の脱出と「何辞為」

原文|劉邦の脱出と「何辞為」

坐須臾、沛公起如廁、因招樊噲出。沛公已出、項王使都尉陳平召沛公。沛公曰、『今者出、未辞也。為之奈何。』樊噲曰、『大行不顧細謹、大礼不辞小譲。如今人方為刀俎、我為魚肉、何辞為。』於是遂去。乃令張良留謝。

書き下し文|劉邦の脱出と「何辞為」

坐すること須臾(しゅゆ)にして、沛公起ちて廁(かわや)に如(ゆ)き、因りて樊噲を招きて出づ。沛公已に出で、項王、都尉陳平をして沛公を召さしむ。沛公曰はく、『今者出づるに、未だ辞せざるなり。之を為すこと奈何。』と。樊噲曰はく、『大行は細謹を顧みず、大礼は小譲を辞せず。如今、人は方に刀俎(とうそ)たり、我は魚肉たり。何ぞ辞するを為さん。』と。是に於いて遂に去る。乃ち張良をして留まりて謝せしむ。

現代語訳|劉邦の脱出と「何辞為」

しばらく座った後、劉邦は立って便所へ行き、その機会に樊噲を呼び出しました。劉邦が外へ出ると、項羽は陳平に劉邦を呼び戻させます。劉邦は言いました。「今、外へ出てきたが、まだ別れの挨拶をしていない。どうしたらよいだろう。」樊噲は答えます。「大事を行う際には細かな配慮にはこだわらず、大きな礼を行う際には小さな非難を気にしないものです。今、相手は包丁とまな板、こちらは切られる魚や肉です。どうして別れの挨拶をする必要がありましょうか。」そこで劉邦はそのまま立ち去り、張良を残して謝罪させました。

読み方のポイント:「如」はここでは行く。「刀俎」は包丁とまな板で、生殺与奪を握る項羽側を表します。「魚肉」は殺されかねない劉邦側。「何辞為」の辞は辞去の挨拶で、「卮酒安足辞」の辞(辞退する)とは使い方が異なります。「小譲」の譲は、ここでは細かなことで責められることと解しています。

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08白璧・玉斗を託し、間道を帰る

原文|白璧・玉斗を託し、間道を帰る

良問曰、『大王来何操。』曰、『我持白璧一双、欲献項王、玉斗一双、欲与亜父。会其怒、不敢献。公為我献之。』張良曰、『謹諾。』当是時、項王軍在鴻門下、沛公軍在霸上、相去四十里。沛公則置車騎、脱身独騎、与樊噲・夏侯嬰・靳彊・紀信等四人持剣盾歩走、従酈山下、道芷陽間行。沛公謂張良曰、『従此道至吾軍、不過二十里耳。度我至軍中、公乃入。』

書き下し文|白璧・玉斗を託し、間道を帰る

良問ひて曰はく、『大王来たるに何をか操る。』と。曰はく、『我、白璧一双を持ち、項王に献ぜんと欲し、玉斗一双を亜父に与へんと欲す。其の怒りに会ひ、敢へて献ぜず。公、我が為に之を献ぜよ。』と。張良曰はく、『謹んで諾す。』と。是の時に当たり、項王の軍は鴻門下に在り、沛公の軍は霸上に在り、相去ること四十里。沛公則ち車騎を置き、身を脱して独り騎し、樊噲・夏侯嬰・靳彊・紀信等の四人の剣盾を持ちて歩走するものと与に、酈山の下より、芷陽を道(みち)として間行す。沛公、張良に謂ひて曰はく、『此の道より吾が軍に至るに、二十里に過ぎざるのみ。我が軍中に至るを度(はか)りて、公乃ち入れ。』と。

現代語訳|白璧・玉斗を託し、間道を帰る

張良が「大王は何を持って来られましたか」と聞くと、劉邦は答えました。「白璧一対を項羽に、玉斗一対を亜父に差し上げようと持参した。だが、その怒りに出くわしたため、差し上げられなかった。私の代わりに渡してくれ。」張良は承知します。当時、項羽の軍は鴻門、劉邦の軍は霸上にあり、四十里離れていました。劉邦は車や供の騎兵を残し、自分一人が馬に乗り、剣と盾を持って走る樊噲ら四人と共に、酈山のふもとから芷陽を通る間道を進みます。出発に際して劉邦は張良に、「この道なら自軍まで二十里を超えない。私が軍に着いた頃を見計らってから、中へ入れ」と言い付けました。

読み方のポイント:白璧は白い玉の円形の器物、玉斗は玉製の酒器です。贈り先は「項羽に白璧、范増に玉斗」。「会」はここでは出くわす・遭うという意味です。「間行」は間道を行くこと。「独騎」は劉邦一人だけが騎乗している意味であり、誰も付き添わず単独で帰ったわけではありません。

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09張良の謝罪と「沛公安在」

原文|張良の謝罪と「沛公安在」

沛公已去、間至軍中、張良入謝、曰、『沛公不勝桮杓、不能辞。謹使臣良奉白璧一双、再拝献大王足下。玉斗一双、再拝奉大将軍足下。』項王曰、『沛公安在。』良曰、『聞大王有意督過之、脱身独去、已至軍矣。』

書き下し文|張良の謝罪と「沛公安在」

沛公已に去り、間(ひそ)かに軍中に至る。張良入りて謝して曰はく、『沛公、桮杓(はいしゃく)に勝(た)へず、辞する能はず。謹んで臣良をして白璧一双を奉じ、再拝して大王の足下に献ぜしむ。玉斗一双を、再拝して大将軍の足下に奉ず。』と。項王曰はく、『沛公安(いづ)くにか在る。』と。良曰はく、『大王、之を督過するの意有りと聞き、身を脱して独り去り、已に軍に至れり。』と。

現代語訳|張良の謝罪と「沛公安在」

劉邦が立ち去り、ひそかに自軍へ戻った後、張良が宴席へ入って謝罪します。「劉邦は酒に耐えられず、別れのご挨拶もできませんでした。私に白璧一対を持たせ、二度拝礼して大王へ差し上げるよう命じました。また、玉斗一対を大将軍に二度拝礼して差し上げます。」項羽が「劉邦はどこにいる」と尋ねると、張良は答えました。「大王がおとがめになるお気持ちだと聞き、一人で抜け出して帰りました。もう自軍へ着いています。」

読み方のポイント:「沛公安在」は場所を尋ねる疑問です。「安」は「いづくに」と読み、ここでは「安んぞ」と反語にしません。「桮杓」は杯とひしゃくから酒を表し、「不勝」は耐えられない。「督過」は過失を責めること。張良の『一人で帰った』という説明と、実際には四人が護衛したことを区別します。

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10范増の怒りと「豎子不足与謀」

原文|范増の怒りと「豎子不足与謀」

項王則受璧、置之坐上。亜父受玉斗、置之地、抜剣撞而破之、曰、『唉、豎子不足与謀。奪項王天下者、必沛公也。吾属今為之虜矣。』

書き下し文|范増の怒りと「豎子不足与謀」

項王則ち璧を受け、之を坐上に置く。亜父、玉斗を受け、之を地に置き、剣を抜きて撞(つ)きて之を破り、曰はく、『唉(ああ)、豎子(じゅし)、与に謀るに足らず。項王の天下を奪ふ者は、必ず沛公ならん。吾が属今に之が虜と為らん。』と。

現代語訳|范増の怒りと「豎子不足与謀」

項羽は白璧を受け取ると、座席の上に置きました。一方、范増は玉斗を受け取って地面に置き、剣を抜いて突き砕き、言います。「ああ、あの若造とは一緒に大事を相談する値打ちもない。項羽の天下を奪うのは、きっと劉邦だ。我々は今にあの男の捕虜になってしまうだろう。」

読み方のポイント:「豎子」は相手を軽蔑する『若造』で、ここでは項羽を指すと読むのが基本です。「不足与謀」は共に計画を立てるに値しない。「吾属」は我々、「之が虜」の之は劉邦です。玉斗を砕く行動と、その直後の発言を結び付けて范増の怒りを説明します。

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11劉邦の帰営と曹無傷の処刑

原文|劉邦の帰営と曹無傷の処刑

沛公至軍、立誅殺曹無傷。

書き下し文|劉邦の帰営と曹無傷の処刑

沛公、軍に至り、立ちどころに曹無傷を誅殺す。

現代語訳|劉邦の帰営と曹無傷の処刑

劉邦は自軍へ帰ると、ただちに曹無傷を処刑しました。

読み方のポイント:「立」は立つという動作ではなく、ただちに。冒頭で項羽が曹無傷の密告を明かしたことを受けています。劉邦が危機を脱したことと、自陣営の密告者を処断したことが、短い一文で示されます。

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鴻門之会のあらすじと登場人物

  1. 背景:先に関中へ入った劉邦について、部下の曹無傷が項羽へ密告します。項羽は攻撃を考えますが、項羽の叔父・項伯が旧知の張良に知らせ、劉邦は翌日、鴻門へ謝罪に向かいます。
  2. 宴席:范増は劉邦を殺すよう項羽に合図しますが、項羽は応じません。范増の指示を受けた項荘が剣舞に乗じて襲おうとし、項伯が体で劉邦をかばいます。
  3. 弁論:張良から危険を聞いた樊噲が宴席へ入り、劉邦の功績を挙げて、彼を殺すのは秦の暴政を繰り返すことだと項羽に訴えます。
  4. 脱出:劉邦は席を外し、樊噲の助言を受けて帰営します。張良は残って贈り物を渡しますが、范増は玉斗を砕き、劉邦が将来の敵になると嘆きます。

登場人物・重要な名前

項羽(項王・籍)

楚の有力な将。宴席の主催者で、范増の殺害の合図には応じません。「籍」は項羽自身の名です。

劉邦(沛公)

先に関中へ入った将。項羽に謝罪し、宴席での危機を逃れます。後の漢の高祖です。

范増(亜父)

項羽の参謀。劉邦を将来の脅威と考え、項羽や項荘に殺害を促します。「亜父」は父に次いで敬う呼び名です。

項荘

項羽側の武将。范増の指示で剣舞を行い、その機会に劉邦を殺そうとします。

項伯

項羽の叔父。かつて張良に命を救われた関係があり、事前に危険を知らせます。宴席では剣を抜いて舞い、劉邦を体でかばいます。

張良

劉邦側の参謀。樊噲に危機を伝え、劉邦の脱出後は宴席に戻って謝罪と贈答を引き受けます。

樊噲

劉邦の部下。宴席へ入り、劉邦の功績を述べて弁護します。退出後には挨拶より脱出を優先するよう勧めます。

曹無傷

劉邦の左司馬。項羽への密告者であると項羽自身の発言で明らかになり、帰営した劉邦に殺されます。

テスト前に確認したい句形・語句

従百余騎

読み:百余騎を従へ

百騎余りを引き連れて

従う側は劉邦ではなく百余騎です。「従」の使役的な用法に注意します。

籍何以至此

読み:籍何を以てか此に至らん

私がどうしてこのような事態に至ろうか

「何以」は理由や手段を問う形。ここでは前の「不然」と合わせ、曹無傷の密告がなければこうならなかったと反語で述べています。

若属皆且為所虜

読み:若が属皆且に虜にする所と為らんとす

お前たちは皆、今に捕虜にされてしまうだろう

若=お前、属=仲間、且=まさに〜しようとする。「為〜所…」は受身で、ここでは捕らえる側の劉邦が省略されています。

臣請入

読み:臣請ふ入らん

どうか私を入らせてください

「請」は自分の行動への許可を求める表現。続きの「与之同命」まで読むと「臣請ふ入りて、之と命を同じくせん」となります。

臣死且不避、卮酒安足辞

読み:臣、死すら且つ避けず。卮酒安んぞ辞するに足らん

私は死さえ避けない。一杯の酒など、どうして断ろうか

「死すら」と「卮酒」を対比する強調と反語。辞は辞退する意味です。

何辞為

読み:何ぞ辞するを為さん

どうして別れの挨拶をする必要があろうか、いや、ない

何〜為は反語。末尾の為は反語を表す語気を添えます。辞は辞去の挨拶で、謝罪するという意味ではありません。

大王来何操

読み:大王来たるに何をか操る

大王は何を持って来られましたか

疑問代名詞「何」が目的語として動詞「操」の前に置かれています。操は携える・持つ。

沛公安在

読み:沛公安(いづ)くにか在る

劉邦はどこにいるのか

場所を尋ねる疑問文。「卮酒安足辞」の安(いづくんぞ/なんぞ)との使い分けを、文脈で判断します。

豎子不足与謀

読み:豎子、与に謀るに足らず

あの若造とは一緒に大事を相談する値打ちがない

不足〜は〜するに足りない。「与」の相手は豎子で、項羽を指す読みが基本です。

立誅殺曹無傷

読み:立ちどころに曹無傷を誅殺す

ただちに曹無傷を処刑する

立は副詞。『立ってから殺す』と訳さないようにします。

現代語訳で迷いやすい「謝・辞・安」の訳し分け

同じ漢字でも、誰が何をしている場面かによって意味が変わります。原文と書き下し文を確かめ、文脈に合う訳を選びましょう。

謝:謝罪する/感謝する

劉邦の「至鴻門、謝曰」は、項羽に謝罪する場面。酒を与えられた樊噲の「拝謝」は、礼をして感謝する場面です。

劉邦の謝罪 / 樊噲の拝謝

安:どうして/どこに

「卮酒安足辞」は反語で、酒を断る理由はないという意味。「沛公安在」は疑問で、劉邦がどこにいるかを尋ねています。

樊噲の反語 / 沛公安在の書き下し

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出典・本文について

出典は司馬遷『史記』項羽本紀です。古典原文を参照し、書き下し文・現代語訳・設問を学習用に作成しています。授業で指定された字体・訓読・解釈がある場合は、それを優先してください。